キケロ『老年について』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
快楽ほど有害なものはない!元老院から追放された男の教訓
キケロ『老年について』を読む(5)老年には快楽がないのは本当か
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
老年には快楽がないので「嫌だ」「寂しい」というが、本当か。そもそも「快楽ほど有害なものはない」、だからないほうがいい、そうキケロは書いている。ストア派もエピクロス派も基本的には「自分を解放する哲学」であり、解放したい欲望には性欲をはじめ、名誉欲や金銭欲などがある。快楽への戒めとして、大カトーは娼婦にうつつを抜かした男を元老院から追放したが、若い頃は難しくても、歳をとると自然とそこから解放できるようになるのではないか。また老年になると、飲み会の楽しみ方も変わってくるだろう。(全9話中第5話)
時間:10分20秒
収録日:2023年6月12日
追加日:2024年2月3日
≪全文≫

●快楽ほど有害なものはない――大カトーが元老院から追放した男の教訓


―― 続いて第3の理由は「老年には快楽がないのは本当か」として、快楽について論じています。快楽がないから「嫌だ」「さびしい」ということに反駁していくのですが、ここにもいろいろなことが書かれています。2つ読みます。

 「青年時代の悪徳の最たるものであった、まさにそのもの(=快楽)をわれわれから取り去ってくれるとは、歳をとることの何と素晴らしい賜物ではないか」

 「タレントゥムのアルキュータースは常々こう言っていた――。
 自然が人間に与える病毒で肉体の快楽以上に致命的なものはない。この快楽を手に入れるために、飽くことをしらぬ意馬心猿の欲望がかきたてられるからである。
 人間にはまた、自然からというか神様からというか、精神にもまして素晴らしいものは授けられていないのだが、この天来の賜物にとっては快楽ほど有害なものはない」

 ここで述べられているのは「快楽がなくて嫌だ」と言うけれど、そもそも快楽は害毒なのだからないほうがいい、という話だと思います。やはりストア派的な考え方が影響しているのでしょうか。

本村 よくストア派は「禁欲主義」、エピクロス派は「快楽主義」と訳されますが、両方とも基本的には「自分を解放する哲学」です。この「解放する」は、大きなところでは「欲望」です。一番の典型が性欲で、他に名誉欲や金銭欲などもあります。

 それらに対して、ある程度、距離を置く。まったく斥けようとすると無理が生じる。キリスト教などでも最初の頃、みんなで洞窟に行って修行することで、肉体的な欲望を全部消し去ろうとしました。でもそれを何人の人ができるのか、という話です。

 特に若いときは、肉体的な欲望が強いのは当然のことです。ただ、それを自制する気持ちを身につけることが一番大事で、「自分の欲望のまま」となれば、それは害毒になるし、自分にも害が及びます。

 若いときは、どうしてもセルフコントロールが欠けがちです。歳をとると、そこから自然に解放されるところもあるから、それはそれでいいではないかと。だから、ストア派にもエピクロス派にもあった自分自身が解放される感覚を、哲学の基本とするのです。

 人間を非常に大きく縛っているのが快楽や欲望だから、それを拭い去ってくれるも...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
ムハンマドを知る(1)その役割と人物像
ムハンマドは神の啓示を受けた預言者で共同体の最高指導者
山内昌之
ユダヤ神話の基本を知る
ユダヤ教の神話…天地創造、モーセの十戒、死後の世界
鎌田東二
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(1)アフォーダンスとは何か-1
トップアスリートが語る究極の「アフォーダンス」とは
佐々木正人
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
自制心の重要性…人間は1日4時間も何かを「欲求」している
森口佑介

人気の講義ランキングTOP10
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(6)日本人の当たり前と山本七平の違和感
日本の異様さ…フィリピンから復員した山本七平が驚いたこと
與那覇潤
これから必要な人材と人材教育とは?(1)人手の供給不足とマクロ経済への影響
ごく一部の人手不足が「致命的」になる…Oリング・セオリー
柳川範之
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(7)日本の倫理こそ未来の理想
他人の幸福実現に喜びを見出す日本の道徳こそ未来の理想だ
賴住光子
ドンロー・ドクトリンの台頭(1)トランプ系論と2025年度版NSS
ドンロー・ドクトリンとは?トランプ系論と西半球の重要性
東秀敏