キケロ『老年について』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
アウグストゥスがお手本、老人にとっていかに権威が大事か
キケロ『老年について』を読む(8)「権威」という褒美
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
古代ローマには「権威をもって支配せよ」という言葉がある。つまり権力も必要だが、最後に重んじられるのは権威であるということだ。アウグストゥスがローマ皇帝の地位を得た理由もそこにある。権威を保つには自制心が必要で、老年期において「最期の芝居をしくじらない」ことである。キケロは悪い老人の例として心配性、怒りっぽい、扱いにくい、貪欲を挙げているが、それは権威と関連があるのではないか。今回は「権威」という褒美について語る。(全9話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分01秒
収録日:2023年6月12日
追加日:2024年2月24日
≪全文≫

●アウグストゥスは「権力」ではなく「権威」で勝っていた


―― 続いて来るのが、「どんな老後が真っ当か」という議論です。いくつか当該箇所を読みます。

 「しかし留意しておいて欲しいのは、わしがこの談話全体をとおして褒めているのは、青年期の基礎の上に打ち建てられた老年だということだ。(中略)言葉で自己弁護をしなければならぬような老年は惨めだ、ということになる。(中略)まっとうに生きた前半生は、最期に至って権威という果実を摘むのだ。」

 「一見取るに足らぬ当たり前のようなこと、挨拶されること、探し求められること、道を譲られること、起立してもらうこと、公の場に送り迎えされること、相談を受けること、こういったことこそ尊敬の証となるのだ。これらはわれわれの所でも他の国でも、風儀が良ければ良いほど篤実に守られている」

 「どんな肉体的快楽が権威という褒美に比べられようか。その褒美を見事に使い終えた人こそ、人生という芝居を演じきり、大根役者のように終幕でしくじることのなかった人だと、わしには思えるのだ」

 ここでも少し厳しいというか、老年が豊かになるのは、若いうちにそれだけやったからだとか、尊敬されることの意味について論じています。日本でも「長幼の序」という言葉がありますが、古代ローマにおいて権威や長幼の序とは、どういう感覚だったのでしょう。

本村 それは強いですね。ローマ人には「権威をもって支配せよ」という言葉があります。つまり権力や軍事力は必要だけれど、最終的に権威がないとみんながひれ伏さない。

 だから、皇帝アウグストゥスが自分の遺言書のようなものに、自分が何をしてきたかを書いています。例えばコンスル(執政官)や法務官、護民官とか、そういう(役職です)。

 アウグストゥスがうまいのは、王様や国王といった地位は作らなかったことです。あくまで今までの地位のみ。コンスルは何回目で護民官は何回目、などと共和政の時代にあった公職をいくつも兼任するという形で君臨している。

 だから、「ポテスタース(権力)」においては、いずれの誰にも勝っていないけれど、「アウクトリタス(権威)」においては他の人に勝っているとしてローマ皇帝の地位を得た。やはり権威を重んじる心が、ローマ人は非常...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(1)真実の創作
プラトンの『ソクラテスの弁明』は謎多き作品
納富信留
ギリシア神話の基本を知る(1)「ゼウス以前」の神々の戦い
ギリシア神話…ゼウスの「父親殺し」とオリュンポス十二神
鎌田東二
インド神話の基本を知る(1)インドの特性と神話の成り立ち
インド神話…『リグ・ヴェーダ』『マハーバーラタ』の壮絶な物語
鎌田東二
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
『「甘え」の構造』への誤解…甘えはダメなものなのか?
與那覇潤
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
自制心の重要性…人間は1日4時間も何かを「欲求」している
森口佑介

人気の講義ランキングTOP10
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
「ホメロス叙事詩」を読むために(7)オデュッセウスの冒険
ホメロスの『オデュッセイア』が描く苦難と誘惑の冒険譚
納富信留
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
日本の財政の真実を検証する(3)金利上昇の深刻な影響
金利が上昇した未来を10年スパンで見てみると…何が起きるか?
宮本弘曉
ギリシア神話の基本を知る(1)「ゼウス以前」の神々の戦い
ギリシア神話…ゼウスの「父親殺し」とオリュンポス十二神
鎌田東二
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎