江戸とローマ~アッピア街道と東海道
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アウグストゥスが強調した「権威」、象徴としての街道
江戸とローマ~アッピア街道と東海道(2)権威に通じる道
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
アウグストゥスが『業績録』の最後に強調したのは「権威」だった。大規模な道路建設に、多大な動員力を要するのはいうまでもないが、それは単なる権力だけでなく、「権威」を意味している。ローマの権威とは、それまでに培われた西洋文明の全てがそこに集約されているということである。ローマは「権威をもって支配せよ」ということを重視したが、ローマに通ずる道はその象徴なのだ。(全3話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分29秒
収録日:2021年8月20日
追加日:2023年7月12日
≪全文≫

●それまでの文明は集約され、ローマに通じる


―― 今回の講義のサブタイトルは「権威に通じる道」ということですが、「権威に通じる道」には、こころとしてはどういう意味を持たせていらっしゃるのでしょうか。

本村 やはりそれは、権威といえばローマであるわけですから。あるいは江戸の場合もそうで、一つの国家なり帝国の中心として、そこに人々が集まってきて、そこでいろいろな価値観を身につけ、それがまた広がっていく。

 特にローマの場合は「すべての道はローマに通ず」というように、それまでの単なる道ではない。人類の文明史が始まってからローマ帝国ができるまでには、3000年ぐらいの文明の歴史があります。

 その時代には、地球規模かどうかということまでは分かりませんが、少なくとも地中海にいたローマ人からすれば、見渡す限りの世界の文明というものが、結局ローマの中に集まってきた。そういう意味で、やはり「すべての道はローマに通ず」というのは、それまでに人類が培ってきた文明というものが、結局ローマの中に集約されている(ということです)。

 例えばポンペイ(遺跡)などには、それなりに立派な貴族たちの家が残されています。「メナンドロスの家」などは、今行っても非常に洗練されていて、「こんな立派なところに住んでいたのか」と驚く。それでもポンペイの中ですから、いわば地方貴族です。

 しかし、一緒に石碑を巡ったギリシャ史の専門家からいわせれば、「こんな建物は、ギリシャ人の目から見れば王侯貴族だな」と。ポンペイの小さな町の地方都市の富豪、あるいは貴族たちが住んだ家が、それまでのギリシャ人の目から見れば、いかに王侯貴族の生活だったか、ということです。

 そういう言葉にも表れているように、ローマの中にはそれまでの3000年の文明や知識が全部集約されて、単に軍事的・政治的な権力だけではない一つの「権威」になっているということになります。


●皇帝を名乗らなかったアウグストゥスの「権威」


本村 皇帝アウグストゥスが言った言葉にも、それが現れています。彼は、自分が王様である、皇帝であるなどと言ったことは一切なく、「自分は確かにローマの第一人者である。第一人者とはどういう意味かというと、ローマ市民の名簿の筆頭に来る人間である。だから、特別な地位にあるのではない」と。

 王様を指すのは“rex”という言葉ですし...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓