江戸とローマ~「父祖の遺風」と武士道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
新渡戸稲造が『武士道』で説く上杉謙信とカミルスの「義」
江戸とローマ~「父祖の遺風」と武士道(4)上杉謙信とカミルス
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
今も年末が近づくたびにドラマで再演される『忠臣蔵』は、武士道が大切にした「義」の世界を描き出したものだ。新渡戸稲造の『武士道』には、大量に古代ローマのエピソードが掲載されている。戦国武将の振る舞いと共通するローマの英雄たち。上杉謙信とカミルスについての話を引用し、解説する。(全6話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分28秒
収録日:2021年7月16日
追加日:2022年12月3日
≪全文≫

●「義」を大切にするのが新渡戸稲造の『武士道』


―― 今回は少し話を変えて、(本シリーズの)冒頭で出てきた新渡戸稲造の『武士道』の話に戻りたいと思います。新渡戸の時代は、外国と日本の違いに必然的に直面しなければならず、今までまったく意識していなかった者どうしがぶつかるような時代です。

 冒頭では、新渡戸が「なぜ日本人はあれだけ礼儀正しい振る舞いができるのか」という質問に答えられず、それを武士道に求めていったということでした。では、新渡戸は自分の見つけた武士道の核心をヨーロッパ人たちに分からせるために、どのような例を使ったのでしょう。また、どのような説明をしたのか、ということもあると思います。

 先生は、新渡戸の『武士道』をお読みになって、どのように思われますか。

本村 私が父祖の遺風に並ぶものとして言ったのは、いわゆる特攻精神や切腹が代表する強面の武士道ではありません。新渡戸稲造の『武士道』の中では、人間が礼節をわきまえ、惻隠の情を失わず、私心を捨てる姿が描かれています。いわば強面の武士道に対して、どちらかというと柔和な武士道というようなものだと思います。

 もともと『葉隠』においても「武士道とは死ぬこととみつけたり」という有名なセリフがあります。そのように語りながら、自分が死に際、すなわち生死の瀬戸際にある時期にあっても、やはり忠孝の礼儀を失わないようにやっていこうというような意味で、自分に克つ。そのことが他者に克つことになるというのでしょう。

 そのようなわきまえができるという意味での武士道ですから、新渡戸稲造は正義の「義」の一字こそ武士道のおきての中で最も大切なものだと考えていたわけです。

 卑近な例でいくと、例えば元禄時代、太平の夢を見がちな時に四十七士の討ち入りがあった。これは、武士道の「義を立てた」という意味では、一つの典型といえるのではないかと思います。


●『武士道』に頻出するローマのエピソード


本村 新渡戸稲造の『武士道』はもともと英語で書かれています。私はこの本を今までにも何度か読んできましたが、今回読んでいて気づいたのは、彼自身が意外とローマを取り上げていることです。

―― ローマのエピソードを、ということですか。

本村 そう。ローマのエピソードを、驚くほどいろいろ取り上げています。私は江戸と比較して、武士道と父祖の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
家康の人間成長~戦略性をいかに培ったか(1)今川「人質」時代と今川義元の思惑
徳川家康の秘密…「辛抱」イメージとは異なる自由奔放な人質時代
小和田哲男
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
武士は「お手本がない時代」だからこそ生まれた…武士誕生の真実と大唐帝国の解体
関幸彦

人気の講義ランキングTOP10
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(3)国司と郡司のつきあい
郡司の妻たちと宴会!?……国司・大原真人今城へのはなむけの歌に記された「媚態表現」の真相と人心掌握術
上野誠
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(2)タタールのくびきと「第三のローマ」
なぜロシアが「第三のローマ」なのか?…東ローマ帝国とモンゴル帝国の根深い影響を探る
上月豊久
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(6)認知症予防と健康寿命の延伸に向けて
フレイル・サイクルは回り出したら抜けられない!?負のスパイラルへの対処法
小川純人
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
自制心の重要性…人間は1日4時間も何かを「欲求」している
森口佑介
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男