江戸とローマ~「父祖の遺風」と武士道
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新渡戸稲造が『武士道』で説く上杉謙信とカミルスの「義」
江戸とローマ~「父祖の遺風」と武士道(4)上杉謙信とカミルス
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
今も年末が近づくたびにドラマで再演される『忠臣蔵』は、武士道が大切にした「義」の世界を描き出したものだ。新渡戸稲造の『武士道』には、大量に古代ローマのエピソードが掲載されている。戦国武将の振る舞いと共通するローマの英雄たち。上杉謙信とカミルスについての話を引用し、解説する。(全6話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分28秒
収録日:2021年7月16日
追加日:2022年12月3日
≪全文≫

●「義」を大切にするのが新渡戸稲造の『武士道』


―― 今回は少し話を変えて、(本シリーズの)冒頭で出てきた新渡戸稲造の『武士道』の話に戻りたいと思います。新渡戸の時代は、外国と日本の違いに必然的に直面しなければならず、今までまったく意識していなかった者どうしがぶつかるような時代です。

 冒頭では、新渡戸が「なぜ日本人はあれだけ礼儀正しい振る舞いができるのか」という質問に答えられず、それを武士道に求めていったということでした。では、新渡戸は自分の見つけた武士道の核心をヨーロッパ人たちに分からせるために、どのような例を使ったのでしょう。また、どのような説明をしたのか、ということもあると思います。

 先生は、新渡戸の『武士道』をお読みになって、どのように思われますか。

本村 私が父祖の遺風に並ぶものとして言ったのは、いわゆる特攻精神や切腹が代表する強面の武士道ではありません。新渡戸稲造の『武士道』の中では、人間が礼節をわきまえ、惻隠の情を失わず、私心を捨てる姿が描かれています。いわば強面の武士道に対して、どちらかというと柔和な武士道というようなものだと思います。

 もともと『葉隠』においても「武士道とは死ぬこととみつけたり」という有名なセリフがあります。そのように語りながら、自分が死に際、すなわち生死の瀬戸際にある時期にあっても、やはり忠孝の礼儀を失わないようにやっていこうというような意味で、自分に克つ。そのことが他者に克つことになるというのでしょう。

 そのようなわきまえができるという意味での武士道ですから、新渡戸稲造は正義の「義」の一字こそ武士道のおきての中で最も大切なものだと考えていたわけです。

 卑近な例でいくと、例えば元禄時代、太平の夢を見がちな時に四十七士の討ち入りがあった。これは、武士道の「義を立てた」という意味では、一つの典型といえるのではないかと思います。


●『武士道』に頻出するローマのエピソード


本村 新渡戸稲造の『武士道』はもともと英語で書かれています。私はこの本を今までにも何度か読んできましたが、今回読んでいて気づいたのは、彼自身が意外とローマを取り上げていることです。

―― ローマのエピソードを、ということですか。

本村 そう。ローマのエピソードを、驚くほどいろいろ取り上げています。私は江戸と比較して、武士道と父祖の...

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