独裁の世界史~ファシズム編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イタリアとイギリスの違いは社会主義との共鳴、その有無
独裁の世界史~ファシズム編(4)ムッソリーニ以後のイタリア
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ムッソリーニが台頭した理由の1つに、「非常時には独裁政にしてもいい」という古代ローマの伝統が影響していたことは間違いない。さらにイタリアの共和政の伝統のなかに社会主義と共鳴するものがあるために、第二次世界大戦後も、イタリアには社会主義的な思潮が根づいたのかもしれない。それが優れた文化力と相まって独特の存在感を国家に与えている。(全7話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分47秒
収録日:2020年1月30日
追加日:2021年4月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●「時代がずれていた」ムッソリーニの登場


―― (ムッソリーニの)非常に不思議な点として、若い頃はレーニンに一目置かれ、買われていたところがあります。同時代の指導者の中では、例えばチャーチルなども比較的ムッソリーニには一目置いていて、話せる奴だと思っている感じがありました。もともと彼はかなり語学の達人だったので、いろいろな会議を回していたところもあり、ミュンヘン会談なども彼が引っ張ったと言われます。何か、人間として不思議な魅力がある人なのでしょうかね。そのあたりはいかがでしょう。

本村 そうですね。時代が違いますが、ビスマルクにもやはりそういうところがありました。プロイセンをドイツ帝国に仕上げた段階でとどめ、それ以上拡大しようとしなかったし、外交路線で非常に巧みにバランスを取っていったあたりです。ヒトラーの場合はそういうふうには言えないけれども、ムッソリーニの場合は、10年後に生れていたらと考えるとどうなったか、その意味では「時代がずれていた」ところがあるかもしれませんね。

―― そうですね。たぶんビスマルクと一番違うのは、外交的な政策ミスというところになりましょうか。ムッソリーニの場合は、政権を取ってから比較的早い段階の1935年に、まずエチオピアを攻めています。前回お話のあったローマ進軍が1922年で、1925年1月に議会で独裁を宣言した後、選挙法などを改正して独裁権力になっていきますが、この1935年にはエチオピアに侵攻してこれを併合し、イタリア帝国になるわけですね。

 その後、1936年から39年までのスペイン内戦ではフランコ側につきます。ここでドイツと友軍として戦うことにより、少し仲を深めていったのです。1939年に第二次世界大戦が勃発すると、しばらくは局外中立の立場を守り、フランスが陥落しそうだということを見て、1940年にドイツ側に立って参戦します。このときに、おそらくイタリアの場合は、イギリス側に立って参戦する道も可能性としては選べたでしょうね。

本村 それは、あったかもしれませんね。結局、ドイツのやり方というのは、ムッソリーニとヒトラーの性格の違いもあるだろうし、国家のあり方としても、後進資本主義国として似通った出発をしているとはいえ、本来ならば日和見的であってもその時々の有利なほうで、帝国主義国家として自立していかなければいけない段階です。

 だからエチオピア...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(1)学問吟味の導入と正統性の問題
松平定信のもう一つの功績「学問吟味」の画期性に注目
中島隆博
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治