独裁の世界史~フランス革命編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜナポレオンはフランス革命の理念を広めようとしたのか
独裁の世界史~フランス革命編(6)皇帝ナポレオンによる独裁
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
全ヨーロッパを駆け抜けたナポレオンの評価は、英雄から人非人まで大きく分かれる。フランス革命の時流に乗って皇帝に上り詰めた彼が杖としたのは革命理念だったが、実際にはヨーロッパ全土にナショナリズムが鼓舞され、自身の帝国は滅亡してしまう。(全7話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分41秒
収録日:2020年1月10日
追加日:2020年10月16日
カテゴリー:
≪全文≫

●ナポレオンが革命理念を広めようとしたのは独裁の正当化のためか


―― ナポレオンの場合、実に近代的な民法などを整備しつつ、一旦断絶していたキリスト教会との復縁をするなど、現実的な対処を行いました。その一方で、今度は彼がヨーロッパを蹂躙していくことになり、世界史は新たな局面に向かいます。ナポレオンが果たした役割について、先生はどのようにお考えでしょうか。

本村 彼は、まず自分がそれほど恵まれた家庭に育ったわけではないので、軍人として抜きんでていくこと、のし上がっていくことを強く求める気持ちがありました。

 国全体が不安定だったこの時期、民衆の反乱が起こったときに、彼は実際に軍人としてかなり強硬な手段に訴え、大砲を発射して鎮めてしまうような形で反乱を収めたわけです。そういうことで、彼は強力な指導者、頼り甲斐のある人間として、周りの人の信望を集めていきます。

 そして、1799年のクーデターで統領政府を打ち立てると、3年後には自分が「終身統領」になります。いわば「皇帝」なわけですが、さらに2年後には、国民投票を通して名実ともにフランスの「皇帝」に就任しました。

 これも、ある意味では完全に立憲君主の考え方です。つまり、ナポレオンは独裁者ではあるけれども、やはり18世紀の啓蒙思想の洗礼を受けているし、さまざまな民の規約である民法なども踏まえています。その上で、彼は自分が革命におけるジャコバン派の轍を踏まないため、穏当な手段で進めていこうとします。

 ただ、彼の陥っていた一つの考え方として、革命の理念を正しいものと捉え、これを広めたいと思っていたのではないか。フランスの支配を広めることが革命の理念を広めることなのだ、と捉えた節があります。彼は、もともとのし上がりたいという欲求を持っていた人だからそうなのかもしれませんが、フランス革命の理想や理念を踏まえ、それを広めていくということで、自分の独裁権力を正当化していたのではないかと思います。


●絶対王政、ロベスピエール的な革命政府、ナポレオン政府の違い


―― それで、まさに「ナポレオン戦争」と呼ばれる、ヨーロッパ全土を巻き込む大戦争になり、北はロシアから南はスペインまで戦場が広がり、最終的には負けて退場していくというところですね。

 絶対王政からフランス革命、それからジャコバン派の独裁、ナポレオンという流れにおい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(4)社会課題の解決に取り組む人財産業
メダカの学校・総合的な学習(探究)の時間・逆参勤交代
小宮山宏
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(4)原点回帰と父親の子育て
妻の両親と夫の両親で孫に与える影響が違うってホント?
長谷川眞理子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤