独裁の世界史~ファシズム編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ムッソリーニを「ドゥーチェ」と呼んだイタリア人の真意
独裁の世界史~ファシズム編(3)「ローマ帝国の再現」を求めたイタリア人
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ファシズムは残虐な独裁の代名詞のように用いられているが、「共和政ファシズム」のようなニュートラルな捉え方も不可能ではない。「ローマ帝国の再現」を市民に夢見させた「ドゥーチェ」ムッソリーニは、類いまれな演出家であったのかもしれない。(全7話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分42秒
収録日:2020年1月30日
追加日:2021年3月26日
カテゴリー:
≪全文≫

●「共和政ファシズム」というローマの伝統


―― 先生がお出しになったこちらの『教養としての「ローマ史」の読み方』では、「共和政ファシズム」という言葉をお使いになって、印象深いことを書かれていました。

 例えば「20世紀に独裁政ファシズムを経験しているので、ファシズムと聞くとすぐムッソリーニやヒトラーといった独裁者を思い出すけれども、もともとのファシズムという言葉には独裁の意味はありません」というところで、「もともとは権威を象徴する言葉に過ぎなかった」と書かれています。先ほど先生がおっしゃった、飾り用の「ファスケス」ですね。ローマでは上級公職者の従者が斧の周りに棒状の木を結びつけたファスケスを掲げ持っていた。それが権威の象徴となったのだということから、「共和政ファシズム」というイタリア的な背景を語り出しておられます。これは、どういう言葉の使い方でいらっしゃるのでしょうか。

本村 「共和政ファシズム」という言葉を使ったのは私が最初で、欧米の学者なども使っていないですね。ローマは、いろいろな意味で称えられるけれども、一方で独裁者を生まないような制度で500年の共和政の伝統をずっと守ってきたわけです。そういう社会でありながら、対外的にはかなり完全な軍国主義国家であり、とにかく武力によって制圧するという姿勢でした。国内的には共和政だけれどもね。

 現代のわれわれは「ファシズム」というと、「独裁政」とすぐ結びつけてしまう。しかし、歴史をさかのぼって考えれば、ローマ国家そのものが領土を最も拡大していく成長期においては、共和政の伝統を守りながら、対外的には軍隊を鍛えて、外を制圧していくというシステムであり、圧倒的な軍国主義社会であったわけです。だから、ファシズムというと独裁政をすぐに思い浮かべるけれども、ニュートラルな意味でのファシズムという言葉を、私はそこで使っているわけです。「軍国主義社会」というぐらいのつもりで使っています。

 しかし、ファシズムという言葉のイメージが非常に悪いものだから、この「共和政ファシズム」に対する風当たりは強かったです。以前に大学院生のときに私が指導して、今は各地の大学で教えている人たちと新年会を行いましたが、「あの、共和政ファシズムというのはどうなんですかね」と、みんなから追及されました。「それは、私は問題を投げかけているわけで、これが...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎