●社会主義者としてイタリア社会党で頭角を現したムッソリーニ
―― スターリンに続きまして、今回はムッソリーニ(ベニート・ムッソリーニ)のお話をうかがいたいと思います。これもまた独特の人というか、面白い人といいますか。(前回のシリーズで)スターリンの場合は、もともとの政治文化が民主政も共和政もなく、ややもすると秘密主義的な王朝の伝統があった国の中での出来事として描いていただきました。
ムッソリーニの場合は、もちろんイタリアの人なので、これまで長い歴史的経験を経てきた国に出てきた独裁者というところで、一種独特なところがあるのかと思います。まずムッソリーニをどのように評価されていますか。
本村 彼は若い時、社会主義者として出発して、社会主義的な政策や考え方を持っているわけです。だから、第一次世界大戦などで政治活動をしていく中でも、最初の段階では社会主義の政党に入っていて、その中で戦争そのものに反対する立場でいました。
―― もともとイタリアの社会党に入って、活動していますよね。
本村 その後、ある時期からむしろ戦争賛成派に変わってしまうところが、彼の大きな転機だったと思います。つまり、彼は理想主義的な意味での社会主義者だったのかもしれないけれども、現実路線を考えると、理想的なことを言っていられなくなったのかもしれません。
また、その段階での第一次世界大戦は典型的な帝国主義戦争で、領土分割のための方法でした。最初は些細なことで始まったので、とてもあのような世界大戦などにはならないと言われていたのが、最終的にはその背景にあったドイツ帝国と他の諸国との対立が表面化するという形になっていったわけです。
そういう中で、イタリアにあっても「その流れに乗り遅れてはいけない」というようなことが現実路線としてあることに、だんだんムッソリーニは気がついてきたのではないかと思います。社会主義者でありながら、「理想的なことを言っていられない」というように、周りの国際情勢など、いろいろなことが分かってきたのが、彼の少々変わり出したところではないかと思うわけです。
●遅れて「統一」となったイタリアの近代化
―― さて、私も含めてなのですが、ご覧になっている方は意外にイタリアの近代史について、十分イメージを持っていない方も多いと思うので、あらすじ的にご紹介いただきたいと思...