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高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化

概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見

山田康弘
東京都立大学人文社会学部人文学科歴史学・考古学教室 教授
概要・テキスト
縄文時代研究の最前線に関して概説的に講義するシリーズレクチャー。第1話の今回は、現在まで高校の日本史などで事実として捉えられてきた縄文時代に関する通説が、最近の新たな発見によっていかに覆されつつあるかという点について解説する。具体的には、縄文時代の時間幅の変化、縄文文化が持っていた高い技術、そして階層性が存在していた可能性について論じる。(全13話中第1話)
時間:10:15
収録日:2019/06/04
追加日:2019/10/01
カテゴリー:
キーワード:

●高校日本史で教えられてきた縄文時代のイメージはもう古い?


 皆さん、こんにちは。国立歴史民俗博物館、また総合研究大学院大学の山田康弘といいます。よろしくお願いします。本日は縄文時代全般にわたっての概説ということでお話をさせていただきたいと思います。

 皆さんは縄文時代というと、どのようなイメージを持つでしょうか。例えば、現在の高校生の教科書などには、次のように書かれています。

 今からおよそ1万2000年前から2300年ほど前の時期である。また、現在とほぼ同じ自然環境である。さらには、食料採取の経済段階であった。縄文土器を使用していた。基本的には20人から30人程度の集団で生活をしていた。黒曜石やヒスイといった物資を用いた遠隔地交易など、さまざまな形で情報交換をしていた。さらに特徴的な点として、統率者や村長(むらおさ)などのリーダーはいたが、身分の上下関係や、大きな貧富の格差はなかった。

 しかし、最新の研究成果によって、これまでの縄文時代やその文化のイメージが徐々に変化してきていると、われわれ考古学研究者は捉えています。


●土器や漆器から見る縄文時代の生活に関する新発見



 それでは、具体的にどのようにイメージが変わってきたのでしょうか。まず1点目は、縄文時代の時間幅です。先ほどの教科書では、およそ1万2000年前から縄文時代が始まるとされていました。

 現在最も古い土器とされているものは、青森県の大平山元(おおだいやまもと)I遺跡から出土しました。これに炭素14年代測定法を用いると、最も古いものがおよそ1万6500年前、それ以外のものもおよそ1万5000年前のものであるという結果が得られました。つまり、現在日本で出土している最も古い土器は、およそ1万6000年前に作られたのではないかということが最近分かったのです。

 ところが、およそ1万6000年前となると、例えば気候の変化に関するわれわれの認識が変わってきます。これまでの認識では、縄文時代の開始前には氷期(以前の氷河期)が終わりを告げ、徐々に暖かくなってくるという時期に、土器が出てくると考えられてきました。この認識とは実際は少し異なる年代から土器が出現していたのではないかということが、最近の研究で分かってきたのです。これに関しては、後でもう...
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