概説・縄文時代~その最新常識
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
土器埋設遺構に反映されている循環的な思想
概説・縄文時代~その最新常識(11)土器埋設遺構と土器棺墓
山田康弘(東京都立大学人文社会学部人文学科歴史学・考古学教室 教授)
縄文時代の精神文化をより詳しく見ていくと、男女の性差の二項対立とともに、出産や再生をモチーフとした文化体系が浮かび上がってくる。山田康弘氏は土器埋設遺構のさまざまな例を挙げて、自然の中における人間生活の再生や循環が縄文人の精神文化において大きな位置を占めていたことを鮮やかに描き出す。(全13話中第11話)
時間:9分12秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年11月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●「土器棺墓」という非常に特殊な埋葬方法


 縄文時代の遺跡を調査していると、何もない場所に不意に土器が埋められているのが発見されることがあります。その土器の形はほぼ完全ですので、偶然ではなく、意図的に埋めてあることが分かります。

 その中を掘っていくと、中に人骨が入っている場合があります。ただの人骨ではなく、生まれてから1年未満の新生児といわれる赤ちゃんの骨が多いのです。生まれたばかりの赤ちゃんを土器の中に入れるというのは、非常に特殊な埋葬方法で、われわれはこれを「土器棺墓」と呼んでいます。

 なぜ土器の中に赤ちゃんを入れたのでしょうか。あるいは、縄文時代後期の関東地方や東北地方では、成人の骨を入れている場合もあります。それでは、なぜ成人の骨を土器の中に入れたのでしょうか。

 実は縄文時代の土器の中には、人面取っ手、あるいは顔面取っ手という形で、土器の縁の部分に顔が付いているものがあります。その顔の下、土器の胴部の部分に、あたかも土器の中から顔を出したような、もう1つ別の顔が付けられているものもあります。手や足のようなつくりもあることを見ると、おそらく出産の場面を土器に写したと考えられ、「出産文土器」と呼ばれています。

 例えば、山梨県の津金御所前(つがねごしょまえ)遺跡から出土した出産(文)土器は、腹から子どもが顔をのぞかせている形です。

 出産文とは異なりますが、長野県の唐渡宮(とうどのみや)遺跡では、おそらくは黒色の顔料を使っているのですが、女性が手を左右に伸ばして足をガッと広げた形で立っている絵が描かれています。そして、その股間の部分に楕円形の線があり、そこから下に何かが落ちてくる場面が描かれています。

 これについては、立ったまま出産をしている立産の場面であるとか、あるいは子どもを生み終わり、後から胎盤が出てくる後産の風景を写しているなど、さまざまな解釈があります。

 縄文人が土器に出産の光景を粘土や絵で表現していることは、非常に重要です。つまり、土器そのものに対して妊娠、出産に関わる何らかの呪術性を彼ら彼女らは感じていたということになります。


...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新