弥生時代の歴史~研究最前線
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
「酸素同位体比年輪年代法」で弥生時代の開始年代確定へ
第2話へ進む
弥生時代の開始時期を発見した「炭素14年代測定法」とは
弥生時代の歴史~研究最前線(1)炭素14年代測定法
歴史と社会
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 名誉教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究専攻 名誉教授)
ここ15年の弥生時代研究の大きな進展は、具体的な西暦年代を用いて時代区分を表現できるようになったことである。藤尾慎一郎氏のチームは、「炭素14年代測定法」と呼ばれる方法を用いた調査によって、弥生時代が従来考えられていたよりも500年早く始まったことを実証した。今回はまず、弥生時代が始まる時期をめぐって、研究者の間でどのような議論がなされてきたのかについて解説する。(全12話中第1話)
時間:12分57秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年10月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●水田稲作が始まってから古墳が出現するまでの弥生時代という1200年


 皆さん、こんにちは。千葉県佐倉市にある国立民俗歴史博物館で考古学を研究している、藤尾慎一郎と申します。今日は日本列島で水田稲作が始まってから、前方後円墳が出現する弥生時代までの歴史について、6つのテーマに分けて講義をいたします。

 まず、その6つのテーマに関して簡単に説明します。まず、九州北部で水田稲作が始まった頃の100年間についてお話しします。次に、100年ののちに社会は大きく変わりますが、どのように社会が変化したかについて述べます。3つ目のテーマは、水田稲作が始まった600年後に金属器が登場します。その登場とともに作られ始めた王の墓について議論します。4つ目は、弥生人が印鑑と文字を使って中国の王朝と外交関係を結んだ、現在からおよそ2000年前の歴史についてお話しします。5つ目は、そうした外交を行っていた北部九州にあった国の内実について議論します。最後に、卑弥呼が共立され、古墳が出現し、古墳時代が始まるまでの歴史についてお話しします。

 今日の弥生研究の特徴は、ここ15年ほどの間に、約1200年間続いた弥生時代に西暦を用いることができるようになったことです。それまでは、弥生時代の、前期・中期・後期という表現を用いていましたが、一般の方からすると具体的にいつ頃のことなのか、イメージがわきづらいと思います。それが、紀元前8世紀、あるいは紀元前5世紀などのように西暦で表現できるようになりました。これがここ15年間の弥生研究の大きな特徴となります。今日はそれに基づいて、講義を行います。


●水田稲作の開始年代が500年さかのぼった、その訳とは


 そもそも、新しい弥生時代の年代感が明らかになった、すなわち水田稲作の開始年代が500年ほどさかのぼったという発見は、2003年5月に文部科学省で行われたわれわれの記者発表が発端でした。スライドは、その記者会見の翌日に在京全国7紙の第一面に載った記事の写真です。

 ここまで反響があるとはわれわれも思っていませんでしたが、本当に大きな反響を呼んだというわけです。

 なぜ水田稲作の開始年代が500年もさかのぼったのでしょうか。当時弥生人が使っていた「甕(かめ)」と呼ばれる調理用の土器の外側に、火で調理をした際に煤(すす)がついていました。この...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子