弥生時代の歴史~研究最前線
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「倭」の範囲は環壕集落の分布と一致しているのか
弥生時代の歴史~研究最前線(6)~外交の始まり~後編
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 研究部 教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究コース 名誉教授)
「倭」という弥生人たちの国は当時、外国にどのように捉えられていたのか。「倭」の範囲は、北は新潟県、東は千葉県から埼玉県あたりにまで及んでいた。対して東北地方では縄文時代の文化がいまだに用いられており、水田稲作にもそれほど固執していない。「倭」という国に対して、国内の文化的差異に着目して解答を与える。(全12話中第10話)
時間:10分40秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年10月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●「倭」の範囲は環壕集落の分布と一致している?


 九州北部の王たちが交流していた当時の前漢王朝は、弥生人のことをどう見ていたのでしょうか。「楽浪海中倭人あり」という記述がありますが、当時彼らは、日本の人々を「倭」と呼んでいました。中国の人々が認識していた「倭」の範囲は、どこまででしょうか。九州はもちろん倭の範囲です。それでは、東端はどこなのかという点に関して、環壕集落の分布に着目して考えてみようと思います。

 この図は、朝鮮半島と日本列島にある紀元前11世紀から古墳時代が始まる直前までの、環壕集落の分布を示したものです。朝鮮半島南部から九州、近畿、東海、関東まで分布しているのが見て取れるかと思います。一方で、東北地方には一つもありません。

 環壕集落の分布を時期別に見てみましょう。3枚の図がありますが、最初は弥生時代の前期です。この時期には、環壕集落はだいたい名古屋近辺まで広がっています。その後、紀元前1世紀頃には、関東地方の利根川近辺まで広がっています。そして、弥生時代の後期になると、利根川の北には広がらず、日本海側の新潟県村上市まで広がります。南の方は鹿児島まで存在していました。

 つまり、環壕集落は千葉、埼玉よりも北には分布していません。つまり、栃木や茨城以北には、1つも環壕集落は見つかっていません。シリーズ講義のなかで、環壕集落は農耕社会の成立を示す考古学的証拠の一つだというお話をしました。そうした環壕集落を持たない地域、すなわち栃木、茨城、そして東北ですが、そこに一つ、線が引けるのではないか。そして、それは倭の範囲と一致するのではないかと考えることもできます。


●環壕集落文化の端にある南関東と東北の遺跡たち


 南関東でも水田稲作と開始とほぼ同時期の紀元前3世紀中頃に、環壕集落が出現します。そのなかで最も有名なものの一つに、小田原市にある中里遺跡が挙げられます。左側は山の方から遺跡を見て、太平洋の方を向いた写真です。真ん中に環壕集落が見えます。その上の方に海岸線が見えます。

 この環壕集落は、海岸線から約6キロメートル内側に入った場所にあり、現在はすぐ脇を新幹線が通っています。そのため、新幹線に乗って東...

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