弥生時代の歴史~研究最前線
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水田稲作が広まった影響は?…社会の変化と大きな問題
弥生時代の歴史~研究最前線(4)~農耕社会の成立~前編
歴史と社会
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 名誉教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究専攻 名誉教授)
水田稲作が定着していく中で、日本にも農耕社会が根付いてきた。環壕集落の跡や副葬品のある墓など、縄文時代には見られなかった文化が徐々に見られるようになってくる。こうした変化は、身分制度や戦争、そして格差の世襲など、今なお残る社会問題が水田稲作の発生とともに出現したことを示唆している。(全12話中第5話)
時間:9分12秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年10月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●農耕社会の成立と高い防御能力を持つ環壕集落


 それでは、第2章「農耕社会の成立」に関する講義に入ります。先ほど、朝鮮半島南部では紀元前10世紀頃に農耕社会が成立したとお話ししましたが、九州北部でも水田稲作が始まってからしばらくたった紀元前9世紀頃に農耕社会が成立します。

 農耕社会が成立した考古学的な証拠としては、朝鮮半島南部の事例でも説明した通り、環壕集落が成立すること、副葬品を持つ有力者の墓が見つかること、副葬品を持つ子どもの墓が見つかることなどが挙げられます。このそれぞれの証拠が農耕社会の成立や有力者の登場、および格差の顕在化を示しています。

 具体的な説明に移ります。先ほど板付遺跡に関してお話しした際に説明しましたが、こちらは日本最古の環壕集落の写真です。右側は上から見た写真ですが、二条の壕が円弧状に見えます。直径が150メートルほどの円形になります。すなわち、紀元前9世紀頃に直径150メートルほどの二条の壕をめぐらした環壕集落が成立するということです。

 その壕の断面を見たものが、左側の写真です。壕の底に男性が立っていますが、壕の深さが見て取れると思います。3000年の間に当時の地表面は削られているので、実際にはもっと深かったということです。しかも断面がV字になっているので、壕の一番深い部分は、足を揃えて立つことはできません。

 ですので、ここに落ちてはまってしまうと、なかなか抜け出すことができないわけです。特に、九州地方の土は「赤土」と呼ばれて、雨が降るとツルツルになり、まず壕から上がることは不可能です。この意味で、この壕は防御機能も兼ね備えていたということができます。


●副葬品の存在から分かる格差の成立


 次に、有力者の墓の一つが、福岡県の雑餉隈(ざっしょのくま)遺跡で見つかりました。この写真はここで見つかった複数の木棺墓です。数千年経過しているので木棺自体は腐ってなくなっており、骨もなく、副葬品だけが見つかります。左側の写真は副葬されている状況で、石剣を確認することができます。

 その剣が右側の写真です。この墓では小さな壺と、石の剣、そして石の矢じりが副葬されていました。このような磨製石剣と磨製石鏃の組み合わせは、先ほど見た朝鮮半島南部と同じ風習...

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