弥生時代の歴史~研究最前線
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本に大きな影響を与えた朝鮮半島の水田稲作
弥生時代の歴史~研究最前線(3)~水田稲作の始まり~前編
歴史と社会
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 名誉教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究専攻 名誉教授)
日本における穀物は、朝鮮半島南部(韓国南部)からの影響を強く受けている。そこで、今回は日本の水田稲作を議論する前に、朝鮮半島における穀物の発展の様子を見ていく。出土した土器あるいは遺跡などから、農耕文化とそれに伴う社会制度の発展を考察できる。(全12話中第3話)
時間:9分37秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年10月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●朝鮮半島では日本よりも500年も前に本格的な農耕生活に入った


 それでは、日本で水田稲作が始まるにあたって大きな影響を与えた朝鮮半島南部(現在の韓国)でどのように農耕が始まったのかという点から、話を始めます。

 青森県の三内丸山遺跡で有名な縄文時代の前期と同時代に、朝鮮半島ではアワやキビなどの穀物を栽培していました。当時は、朝鮮半島で新たな発明がなされると、基本的にはすぐに日本、特に九州や西日本に伝わっていました。しかし、どういうわけか日本でアワやキビを栽培していたという証拠は出てきません。これが日本で初めて出てくるのは、水田稲作が始まる紀元前10世紀だと、現在は考えられています。

 つまり、朝鮮半島ではアワやキビを栽培していたにもかかわらず、九州の人々はそうした動向には見向きもせずに採集生活を続けていたという状態が、何千年も続いていたということになります。

 今から約3500年前の紀元前15世紀には、朝鮮半島でも数ヘクタールという大きな畑を作って、そこでコメや麦を栽培する生活が始まります。朝鮮半島では日本よりも500年も前に、本格的な農耕生活に入ったのです。


●朝鮮半島南部の遺跡から出土したもの


 この写真は、ダムの建設に伴い水没する地域の発掘調査を行った際の写真です。この川のそばにある、縦にたくさん線が引いてある場所が畑の畝の跡です。この畑は約3ヘクタールほどの大きさがあります。実際にコメや麦など炭化した穀物も出てくるので、本格的に農耕生活に入っていることが分かります。

 上のスライドにある左写真の下側にあるのは当時の住居です。非常に大きいことが分かります。右写真にあるのは、「石包丁」と呼ばれる収穫具です。昔は、コメが熟す時期は穂ごとに異なるので、熟しているものもそうでないものも取り去る根刈りはできません。そのため、熟しているもののみを摘み取るために、石包丁を用います。

 畝が交差しているものなど、さまざまな畑の形があります。これらの違いから時期が異なることが分かります。

 紀元前11世紀になると、朝鮮半島南部で水田稲作が始まります。本格的な穀物栽培が始まって約400年後のことになります。

 こちらにある写真は...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
未来を知るための宇宙開発の歴史(13)発展する宇宙空間利用と進化する技術
最近の話題は宇宙生命学…生命の起源に迫る可能性
川口淳一郎
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(3)戦狼外交の戦略と思惑
戦狼外交で国際秩序に挑戦…戦術的な微笑外交で見誤るな
垂秀夫
数学と音楽の不思議な関係(2)リズムと数の不思議と変拍子
童歌「あんたがたどこさ」は何拍子?変拍子の不思議な魅力
中島さち子
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(3)戦前から紐解く財政構造
日本も資産格差は案外大きい?…預金の偏在と世代格差
養田功一郎