弥生時代の歴史~研究最前線
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
弥生人と朝鮮半島をつなぐ壱岐の「原の辻遺跡」
弥生時代の歴史~研究最前線(6)~外交の始まり~前編
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 名誉教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究専攻 名誉教授)
弥生人は次第に日本の外に出て、朝鮮半島や中国の人々と交流を持つようになる。壱岐の「原の辻遺跡」は、そうした外交のための前進基地と考えられており、当時の活発な経済活動や文化交流の跡が伺える。こうした活動を指導していた弥生人の王は、九州北部で中国からもらった鏡などを副葬品として用い、自らの地位の高さを示していたのである。(全12話中第9話)
時間:12分48秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年10月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●弥生人と朝鮮半島をつないだ「原の辻遺跡」


 これまで、弥生人と朝鮮半島の関係についてお話ししてきましたが、次第に弥生人は中国人と交流を持つようになります。これを「外交の始まり」と呼ぶならば、おそらく次のような形で始まったと考えられます。

 まずは、糸島地域の人々が朝鮮半島南部に渡るための足がかりとした前進基地である、壱岐の「原の辻遺跡(はるのつじいせき)」についてお話しします。

 この写真は、山の上から見た原の辻遺跡の遠景です。川の向こうに見えるのが原の辻遺跡です。川は左側に下って海に至ります。

 原の辻遺跡は紀元前6世紀頃の遺跡で、突然出現しました。その後、紀元前3世紀には環壕集落が形成されました。

 この原の辻遺跡がある丘陵上は大変風が強く、現在でも地元の人々はむらを造らない場所として有名です。縄文時代にはむらはないのですが、弥生時代の紀元前6世紀頃に突然ここにむらが出現したのです。つまり、むらの外からやってきた人々によって、むらが造られたのではないかと考えられます。これが、糸島地域の弥生人の前進基地ではないかといわれている所以です。

 先ほど見えた川を上って、この原の辻遺跡を訪れていたと考えられます。海からは直接遺跡を見ることはできません。つまり、外から見られることはなく、防御的な面からは非常に優れています。川を上ってきた船は、この丘陵の北西端にある船着場に着きます。そこで荷下ろしをして、さまざまな文物を運び出し、そして運んでいくわけです。

 左側の図が丘陵全体のもので、真ん中上の部分に少し突き出した部分に紀元前3世紀に環壕が造らました。その環壕にくっつくようにグレーの細い帯がいくつか見えますが、これは運河で、ここを小舟で渡ってきます。


●原の辻遺跡の考古学的試料が示す当時の経済活動や王の身分


 この原の辻遺跡からは、非常に珍しいものが見つかりました。これは分銅のように見えますが、「権(けん)」と呼ばれているもので、竿秤の重りです。今の若い人は知らないかもしれませんが、われわれの世代だと、新聞回収にきたおじさんがこの竿秤で新聞の重さを測ってちり紙と交換してくれていたことを思い出します。その竿秤用の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
戦国合戦の真実(1)兵の動員はこうして行なわれた
戦国時代の兵の動員とは?…無視できない農民の事情
中村彰彦
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(2)民意は本当に反映すべきか
デモクラシーとエリート主義の限界…立憲主義と共和主義
齋藤純一
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
医療から考える国家安全保障上の脅威(1)「非対称兵器」という新たな脅威
フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威
山口芳裕