●朝鮮半島由来の墓から出てきた縄文人の謎
―― 次が佐賀県の大友遺跡です。
藤尾 これは、先ほどお見せした、もろ縄文のDNAを持つ弥生時代人になります。これがだいたい紀元前800年頃です。弥生時代が始まった頃の熟年女性なのですけれど、抜歯もありますから、縄文由来の風習をちゃんと持っていますね。
それから、オオツタノハの貝輪というものがありますけれど、これは先ほど出てきたイモガイとか、ゴホウラのような巻き貝ではなくて、2枚貝のオオツタノハという、縄文時代からある貝輪を持っているという人たちなのです。
ですから、抜歯もあるし、縄文由来の装飾品も持っています。しかも骨を見ると完全な縄文人なのです。なので、弥生時代の開始期には縄文人がいますよねという話は、それはそれで分かるのです。
もう1つ面白いのは、この人が葬られていたお墓です。これが支石墓というお墓なのですけれど、これはなんと当時の朝鮮半島で流行っていたお墓なのです。
―― 日本でもない、朝鮮半島のですか。
藤尾 日本ではないのです。完全に朝鮮半島由来のお墓なのです。
―― なるほど。
藤尾 もろ縄文の人が、これに入っていたのですね。なぜだ、われわれはふつう、朝鮮半島系のお墓で見つかると、そこからは渡来人が出てくると思っていたのです。ところが、出てきたのはもろ縄文人だったということです。しかも核ゲノムを測っても100パーセント縄文人だということは、当時朝鮮半島で流行っていたお墓に私も入る(ということになった)。理由は分かりませんけれど、入ったのでしょう。だから、お墓の種類だけでは(分かりません)。それは当然そうですよね。キリスト教のお墓だって日本人は入りますから。
―― そうですね。
藤尾 外国人墓地だって外国人だけではないから、それは当たり前なのですけれど、弥生時代もそうだったということになります。
●DNA分析によって見えた渡来系弥生人の混血
―― 次は下本山の遺跡です。
藤尾 ここは佐世保にある遺跡なのですけれど、これはもともと西北九州弥生人といわれていた人です。もろ縄文の人です。ところが、核ゲノムを測ったら渡来系の人たちと混血していたのです。ただし縄文人と現代日本人の中間ぐらいに来るのです。
――...