●日本にあった穀物の野生種はヒエだけ
―― 続きまして、穀物のお話です。
藤尾 そうですね。もともと、冒頭でもお話ししましたけれど、縄文農耕説があります。縄文農耕説の欠点は、農耕というけれど、いったい何を作っていたのかがなかなか決まらなかったことです。
でも皆さんの念頭にあるのは、アワやキビといわれている、いわゆる雑穀類なのです。これは何が大きな影響を与えているかというと、照葉樹林文化なのです。
焼き畑から水田稲作へという、1970年代の大きな理論があります。それで皆さん、アワやキビを想定しているのですけれど、遺跡から出てこないのです。これは考古学者が見つけられないのです。なので、作物が分からない縄文農耕説ですけれど、何とかしてそれを見つけようではないかということによって始まった方法が、次に出てくる「レプリカ法」なのですが、日本列島に野生種からある穀物はヒエだけなのです。
―― では、(それが)どこかから来ているのかということになりますね。
藤尾 アワやキビですが、完成された栽培種が外から来ない限り、日本列島ではもう出てこないという話になるわけです。
―― それはどうして分かるのですか。
藤尾 野生種自体がないですからね。
―― そういうことなのですね。なるほど。
藤尾 ヒエにはイヌビエというものがあるのです。これは、三内丸山遺跡でもたくさん見つかっています。食べてみた人がいるのですけれど、おいしくなかったそうなのです。(アワやキビといった)穀物については野生種がないのです。
アワやキビというと、キビはインコの餌か、きび団子ぐらいしか私たちは知らないでしょう。(アワは)粟飯とかは食べたことがないので分からないのですけれど、実際に粒の大きさを見ると、(スライドの)下のほうに銀色のものが映っていますが、これが50倍に拡大した模型です。キビがいちばん小さくて、次はアワで、やはりコメは大きい。それから、コクゾウムシはご存じですか。
―― よくコメに付くやつですね。
藤尾 若い人は知らないですよ。小学生は知らないですね。
―― なるほど。
藤尾 コメに付いて、そのコメの中に卵を産んで、そのコメの栄養を食べて大きくなって、育つわけですけれど、右側(の写真)がコクゾウムシです。コメの大きさに比べると少し小...