概説・縄文時代~その最新常識
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
縄文人の「第二の道具」と呼ばれる土偶、石棒の意味と目的
概説・縄文時代~その最新常識(10)縄文時代の精神文化
山田康弘(東京都立大学人文社会学部人文学科歴史学・考古学教室 教授)
縄文時代の精神文化に影響を与えたのは、定住性の強弱と人口の多寡。人口が多く、定住性も非常に強いと考えられる東日本では土偶や石棒が急激に発達したが、これらは二種類に分けることができる縄文人の道具の中で「第二の道具」と呼ばれるものだ。「第二の道具」はどんな特徴を持ち、土偶や石棒は何を表現したものなのか。(全13話中第10話)
時間:8分33秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年11月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●縄文文化に大きな影響を与えたのは定住性の強弱と人口の多寡


 縄文人の生活は、前回までにお話したようにさまざまなタイプの村に住んでいたということが分かってきましたが、その背景にある社会の複雑性は、定住性の強さだけではなく、人口の多さによっても変わってきます。

 縄文時代の精神文化は、定住性の強弱とともに、人口の多寡という変数でも判断することができます。人口が少なく、集落の数もそれほど多くなく、かつ定住性がそれほど強くない中国地方では、土偶や石棒などの呪術具は発達しません。一方、人口が多く、定住性も非常に強いと考えられる東日本では、土偶や石棒が急激に発達します。このように、定住性の強弱と人口の多寡が、縄文社会、縄文文化に与えた影響は非常に大きいことが分かります。

 その点を踏まえた上で、精神文化の在り方についてお話しします。食料のほとんどを自然に依拠していた縄文人にとって、集落周辺のバイオマス、すなわち利用可能な食料資源の総量の増減は、最大の関心事の一つです。集落周辺のバイオマスが常に集落全体を維持できるだけの十分な量を保っているかという点は、実は大きな問題なのです。

 例えば、ある年は非常に寒く、ドングリがあまり採れず、動物も少ないということがあるかもしれません。その年によって、バイオマスの大きさは増減します。現代人のわれわれもそうですが、食べ物などのストックは多ければ多いほど安心できるわけです。

 そのため、縄文時代の人たちは意図的に拡散します。集落の規模そのものを小さくすることで、生存維持を図るのです。100人で住むよりは10人ずつで住む方が、自力で生活できると考えて、集落を分けるのです。

 あるいは集落のベースキャンプといわれる本拠地そのものを、別の場所に移動させるという物理的な方法で対処することもありました。また、食料となる動植物を積極的に管理しました。このような方法で、バイオマスの少ない場合にも適応や対応していたと思われます。


●縄文人が使った道具は二種類に分けることができる


 縄文時代の人たちは、以上のようなマンパワーや物理的な方法を用いる一方で、祈るという観念的な方法でバイオマスの維持や増産を企図していました。


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
概説・縄文時代~その最新常識(2)縄文時代の開始時期に関する三つの説
縄文時代の始まりはいつから?…三つの説の特徴とは
山田康弘