概説・縄文時代~その最新常識
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
縄文時代の食生活…驚きの食料計画や入手方法とは
概説・縄文時代~その最新常識(7)厳しい環境下での食料計画
山田康弘(東京都立大学人文社会学部人文学科歴史学・考古学教室 教授)
水田稲作などの農耕生活にまだ入っていない縄文人にとっては、食料をどのように調達するかという点は非常に重要な課題であった。彼らは最も食料が不足する春や初夏に備えて、木の実などの収穫時期である秋から1年間の食料計画を立てていたのである。また、安定して食料を消費するために、保存や狩猟に対してもさまざまな工夫をこらしていた。(全13話中第7話)
時間:9分28秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年11月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●食料が不足する春から初夏を見越して計画を立てていた


 定住生活が徐々に発展していくにつれて、縄文人の生活はある一定の型を持つようになっていきます。食料について考えてみましょう。

 日本列島は温帯に位置しています。したがって、春夏秋冬の四季があります。それでは、日本列島域において、最も食べ物が多くなる時期はいつでしょうか。皆さんにもすぐお分かりいただけるかと思いますが、秋ですね。実りの秋、収穫の秋などとも呼ばれます。さまざまな木の実が採集できます。また、サケやマスが川に戻ってきます。このように、食料の総量、これをわれわれは「バイオマス」と呼びますが、そのバイオマスの量が最も大きくなるのは秋です。

 一方で、最もバイオマスの量が少なくなるのはいつでしょうか。寒くなる冬だと思われる方は多いかもしれません。しかし、冬には、例えば秋に荒食いをしたシカやイノシシは多くの栄養を保持しています。そして、雪が積もっていると足跡を追跡しやすく、さらに落葉広葉樹林の葉が落ちるために見通しが利くので、冬は一番狩猟に適した時期なのです。縄文時代の人たちも、シカやイノシシ、場合によっては冬眠しているクマやウサギを狙うのは、おそらく冬だったと考えられます。

 それでは、バイオマスの量が最も小さくなるのは、実は春から初夏にかけての時期です。山を見ると、山菜があります。しかし、彼らの重要なカロリー源となるデンプン質は、それほど多くありません。海に行けば、確かに貝は拾えます。ところが、貝は重量で考えてみますと、貝殻が重い割には中身はそれほどありません。

 このように、彼ら自体が身体を動かすエネルギーとなる炭水化物の量は、春から初夏にかけて大きく減ります。逆にいうと、彼らは秋に食料を多量にストックして、ほぼ1年後に当たる次の年の春から初夏にかけての時期をどのように乗り切るかという1年間の食料計画を立てるのです。


●年間食料調達カレンダーに見る縄文人の食料生活


 最近、博物館では、縄文時代の年間食料調達カレンダーが展示されていることがあります。それを見ると、狩猟は冬に行われ、クリやドングリ、トチやキノコなどの山菜や木の実の採集は秋に行われます。夏には魚を捕り、春にはワラビなどのさまざまな山菜を採集します。このような1年間にわたる食料調達...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
概説・縄文時代~その最新常識(2)縄文時代の開始時期に関する三つの説
縄文時代の始まりはいつから?…三つの説の特徴とは
山田康弘