概説・縄文時代~その最新常識
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
縄文時代の「結婚、家族」を探る…現代との大きな違いとは
概説・縄文時代~その最新常識(9)縄文時代の家族像
山田康弘(東京都立大学人文社会学部人文学科歴史学・考古学教室 教授)
縄文時代、「家族」はどのようなものであったのだろうか。当時の社会状況を考えると、結婚相手は生まれた時点であらかじめ決められていた可能性が高く、現代のいわゆる自由恋愛は基本的になかったと考えるのが自然だという。また、家族の形態としては、出土した人骨などの分析から、現代のような核家族だけでなく、祖父や祖母などを加えたいわゆる拡大家族が縄文時代の基本単位であっただろうと考えられる。(全13話中第9話)
時間:11分39秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年11月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●縄文時代、自由恋愛は基本的になかった


 前回「家族」という言い方をましたが、縄文時代の家族の形に関しては、実はよく分かっていません。例えば、先ほどネットワークを作る上で婚姻が利用されたと説明しましたが、その婚姻にしても、自由恋愛はおそらくほとんどなかったと考えられます。

 つまり、ネットワーク形成のために婚姻が用いられるのであれば、子が生まれた時点でどこに嫁がせる、どこにいくのかあらかじめ決まっている可能性が高いのです。そう考えると、自由恋愛は基本的になかったと考えるのが自然です。

 こうした指摘をすると、学生たちからは驚きの声が上がります。しかし、考えてみれば、日本でも戦前、あるいは戦後少したった段階でも、恋愛感情抜きの結婚は、実は非常に多く見られた婚姻形態です。また、世界の狩猟採集民や農耕民の間でも、恋愛感情に基づいた結婚は、実は事例としてはそれほど多くないといわれています。

 したがって、人間が社会的な集団、例えば家族を作っていく際には、自分たちが考える以外にもさまざまな方法がある、つまりそこには多様性があるという点を、押さえておいてほしいのです。


●核家族だけでなく、拡大家族も一つの世帯として形成されていた!?


 縄文時代にどのような婚姻形態が取られていたかは、実はよく分かっていません。研究者によっては、一夫多妻であった可能性もあるとされています。場合によっては、一妻多夫であったと考えている研究者もいます。

 ただ世界的に見ても、一妻多夫という婚姻形態は珍しいのです。よって、縄文時代の場合も、住居の規模などから見ると、一夫一妻、もしくは一夫多妻、つまり女性のパートナーが2人から3人程度という形態はあり得たかもしれません。

 先ほど説明したように、竪穴住居の中に住んでいた人の数が5人から6人とすると、これに見合った規模の家族、現在われわれが知っている人間集団として家族がおそらく住んでいたと考えられます。しかも単婚家族です。さらに、父親と母親とその子どもたちから形成される核家族が、最も適切だろうと私は考えています。

 民族学者の大林太良(おおばやしたりょう)先生は、世界各地の狩猟採集民の例から、一つの家に住む人々は核家族が多いと指摘しています。この主張を援用すると、縄文時代にも核家族が一つの住居には住んでいただろうと考えられます。場合...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子