●植物成分の構成とそのさまざまな性質の違い
続いて、植物成分の構造と特性に関して、簡単に説明します。簡単にいうと、植物はおよそ9割が主成分、1割が副成分です。この1割の中には、例えばお茶のカテキンや人間を殺傷することができるトリカブト、量によっては薬にもなる非常に貴重な成分も含まれています。残りの9割は主成分で、セルロース、へミセルロースという多糖類、そしてリグニンという複雑なベンゼン環を持った物質から形成されています。重量からいうと、主成分のおよそ半分がセルロースです。したがって、セルロースは地球上で最大の蓄積量および年間生産量のバイオマスということができます。
このリグニンという物質は、取り扱いは厄介ですが、大変重要な役割を果たします。植物の生命維持のために、このようなベンゼン環を持った物質がつくられます。多糖類であるセルロースとヘミセルロースは酵素でつくられます。酵素でつくられたものには、必ず可逆反応があり、すなわちセルロースであればセルラーゼという分解酵素、ヘミセルロースであればヘミセルラーゼという分解酵素があります。
リグニンはラジカルカップリングという有機化学反応で最終的につくられます。私たちが直面しているゴミの問題の原因となっているもの、要するに人間が化学反応でつくったものは生分解性がないのですが、そうした物質を植物が自らつくり出す、つまりリグニンを分解する酵素がありません。それは先述のように化学反応でできているからです。よって、セルロースとヘミセルロースは微生物によって生命維持のためのエネルギー源となりますが、リグニンは分解されずに最終的には石炭や石油といった、現在私たちが用いている化石資源のもととなっている安定な物質だと考えられています。
次のページで化学構造を簡単に紹介しています。詳細は省きますが、セルロースはこのようにブドウ糖がつながった規則正しい構造をしています。少し構造が異なるブドウ糖からできているデンプンは、私たちがエネルギーとすることができますが、人間はセルロースをエネルギーに変えることはできません。身の回りのものとしては、紙やセルロース繊維、つまり綿繊維、および液晶ディスプレイ用のフィルムなどに用いられています。このように、身の回りの...