セルロースナノファイバーとは
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
セルロースには変換プロセスのブレイクスルーが不可欠
第2話へ進む
先端材料としてセルロースナノファイバーに高まる関心
セルロースナノファイバーとは(1)バイオマスと環境問題
磯貝明(東京大学特別教授/東京大学名誉教授)
悪化の一途をたどる環境問題への対応は、世界的にも喫緊の課題である。その解決の糸口として、「セルロースナノファイバー」という新素材に関して、東京大学農学生命科学研究科の磯貝明教授が連続講義を行う。初回の講義では、植物由来のバイオマスという材料を用いるサイクルが、大気中の二酸化炭素量の減少を含めたさまざまな恩恵をもたらすことを説明し、バイオマス利用の今日的重要性を強調する。(全7話中第1話)
時間:9分47秒
収録日:2019年11月8日
追加日:2019年12月1日
≪全文≫

●バイオマス利用のサイクルが大気中の二酸化炭素量削減に貢献する


 それでは、本日は「夢の新素材セルロースナノファイバーとは」ということで、研究内容を紹介します。内容に入る前に、皆さん、セルロースという単語をお聞きになったことがあると思います。最近の話題としては、2019年10月から開催された東京モーターショーでセルロースナノファイバーを使った自動車やタイヤなどが紹介されました。その他にも、私たちの身の回りにセルロースナノファイバー関連の製品が少しずつ出てきています。本日は、その基礎的な知識から、応用の問題、そして今後の課題についてお話しします。

 まず「セルロースとは何か」という点を説明する前に、バイオマスについてお話しします。植物の主成分、すなわち植物資源、生物資源のことをバイオマスといいますが、このバイオマスの利用促進が現在、海洋マイクロプラスチックなどの石油系の材料に対して課題になっています。

 ご存じの通り、20世紀は化石資源の全盛期であり、私たちの文化的な生活をエネルギーと材料としてサポートしてきました。その結果、大変便利で豊かな生活を手に入れましたが、その一方で、21世紀に入って地球温暖化やゴミの蓄積、資源の枯渇、海洋マイクロプラスチックの課題などがクローズアップされました。これまで化石資源に依存していた社会から、再生産可能な植物バイオマスを用いた社会基盤に、少しずつ変えていく必要があるという動きがあります。その植物の主成分がセルロースなので、私たちはセルロースに着目しました。

 ご存じの通り、人間を含めたほとんどの生物は、生命維持のために酸素を吸って二酸化炭素を放出します。エネルギーも同様に酸素を燃やして二酸化炭素を放出します。地球温暖化に関係があるので、なんとか二酸化炭素を減らそうという動きがあります。二酸化炭素を吸収するのは、唯一植物だけです。しかも植物は、成長の段階で二酸化炭素を吸って、その炭素で自分の体を大きくしています。大きくなった植物は、成長する必要がないので二酸化炭素を吸収しなくなります。むしろ生命維持のために、呼吸を通じて二酸化炭素を放出するようになります。ですので、植物を植えてそれを育て、大きくなった木は切って材料として用いるという循環が機能すれば...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄