セルロースナノファイバーとは
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ナノセルロースへの注目度が高まった4つのブレイクスルー
セルロースナノファイバーとは(3)ナノセルロースへの変換
科学と技術
磯貝明(東京大学特別教授/東京大学名誉教授)
木質セルロースから実際に素材として使えるナノセルロースへの変換過程には、安全性、コスト、質の高低など、さまざまな問題がある。そんなセルロースには大きく分けて4つの種類があり、それぞれ形状や生成方法に短所と長所があるという。そうしたなか、世界各国でさまざまな研究が行われた結果、4つの重要なブレイクスルーが起こり、材料としての実用可能なレベルにまで進展してきている。(全7話中第3話)
時間:12分15秒
収録日:2019年11月8日
追加日:2019年12月11日
≪全文≫

●セルロースの中身とその利用に向けた研究


 それでは、改めて木質セルロースからナノセルロースへの変換についてお話しします。

この図にあるように、植物は自分の身を守り、かつ重力に逆らって自分の体を支え、風雨に耐えるために、極めて精緻な段階構造を持っています。左側の木材や、それを顕微鏡で見たパイプ状のものの集合体は、ご覧になったことがあるかもしれません。このパイプ上のものを一本ずつバラバラにしたものがパルプ、あるいはセルロース繊維と呼ばれているものです。これをすき直してシート状にしたものが紙です。

 さらに細かく見ると、繊維の中にはまた細かい繊維があり、一番小さいレベルはセルロース分子という先ほど見たようなブドウ糖が直鎖状につながった高分子です。その次に小さいレベルが、学術的には「セルロースミクロフィブリル」と呼ばれているものです。これは、セルロース分子が30本から40本ほどまっすぐつながっています。まっすぐ分子をつなげることは、合成ではなかなかできません。合成繊維は必ずどこかで曲がってしまうのが欠点です。植物はゆっくりですが、まっすぐ分子を並べることができるのです。しかも、この幅は3ナノメートルで、カーボンナノチューブよりも少しだけ太い幅です。非常に精緻なナノファイバーを植物はつくって、それで自分の体を支えているのです。

 このセルロースミクロフィブリルは地球上で最大の蓄積量、年間生長量のバイオ系ナノファイバーですが、これを左側の緑の太い1本とすると、セルロースミクロフィブリル間は無数の水素結合でしっかり結合しているので、これまでこれを剥がしてセルロースナノファイバーとして利用することはありませんでした。

 ところが不思議なことに、今世紀に入って、特に北欧、北米、日本など森林資源が国策の国でナノセルロースの研究開発が進められてきました。日本では京都大学農学研究科教授の矢野浩之先生の先導で、2002年前後からこうした研究が進められています。


●セルロースナノファイバーの実用化につながる4つのブレイクスルー


 昔から、セルロースミクロフェブリルが一番細かいレベルとして植物を支えていることはわかっていたのですが、効率的にダメージなく一本ごとバラバラにすることができませんでした。し...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎

人気の講義ランキングTOP10
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
日本の定年制はおかしい…ガラパゴス的で不幸を招く制度
出口治明
「アカデメイア」から考える学びの意義(3)受け継がれる学園の理念
アカデメイアからアカデミーへ…自由なる学びの府の原型
納富信留