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セルロースナノファイバーがCO2削減に貢献するための課題

セルロースナノファイバーとは(7)CNFの利用状況と課題

磯貝明
東京大学特別教授/東京大学名誉教授
概要・テキスト
セルロースナノファイバー(CNF)の優れた点は、バイオマス由来であるため、二酸化炭素(CO2)の吸収、固定化、削減に貢献できることである。日本はこの分野をリードしており、実際にいくつかの企業が実用化に成功している。しかし、本格的に二酸化炭素の削減に貢献するためには、いくつかの課題がある。最終話では、CNFの利用状況と課題について解説する。(全7話中第7話)
時間:08:53
収録日:2019/11/08
追加日:2020/01/15
≪全文≫

●CNFはCO2削減に大きく貢献できるポテンシャルを持っている


 私たちが目指す方向として、未利用の木質バイオマス資源は国内に豊富にありますから、新しい方法でセルロースを取り出すよりは、これまで紙パルプ産業が長い時間をかけて確立してきた既存のパルプ化と漂白の技術で、セルロースという素材と電力エネルギーを両方得られるプロセスを構築しているので、それを変えることなく用いていくことを考えています。

 今まではセルロースを紙として用いていたのですが、紙の消費量は落ちているので、今度はナノファイバーに変換し、従来にない新しい循環の輪を形成する先端材料として用いることが求められます。その場合は、最終的にはカーボンニュートラルなので、森林に二酸化炭素(CO2)を吸収してもらうという循環ができれば、非常に理想的だと思います。

 これによって、世界が目指しているグローバルな課題である地球温暖化への対策、二酸化炭素の固定化という課題の解決に向けて、日本がリーダーシップをとることができる可能性があるということで、大いに期待しています。


●CNF研究は日本がリードしており日本企業も積極的に実用化に動いている


 長所としては、日本発の技術で今のところ世界をリードしているという点が挙げられます。他の国の追随も非常に激しいですが、まだ日本がリードしている状況です。また、これまでシリーズ内で述べたように、針葉樹が最もこの技術に適しているということであれば、日本の未利用のスギやヒノキの間伐材が、価値ある素材になりうるという点も重要です。それによって、既存の産業だけではなく、先端産業と森林産業が融合した新しい産業と雇用の創生に期待することができます。加えて、カーボンナノチューブやフラーレンも日本発の優れたナノ材料だったのですが、これに次ぐ新しいバイオ系のナノ素材として注目を集めています。

 課題としては、安全性の確保やさらに効率的なプロセスの発見、市場原理に則った低価格、高機能の汎用的な先端材料として用いることができる状態にしていけるか、などが挙げられます。

 現状では、2015年から日本製紙と日本製紙クレシアが、介護者の負担を軽減するための、超消臭機能を持つ大人用の使い捨てオムツとして実用化しています。三菱鉛...
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