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GX版「創造的破壊」へ、7年でCO2を半減させる3つの方法

GXとDX~創造的破壊と「low-hanging fruit」のすすめ

伊藤元重
東京大学名誉教授
情報・テキスト
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「GX(グリーントランスフォーメーション)」におけるキーワードはともに「創造的破壊」である。これが今、日本の政策の中で非常に重要な意味を持ってきている。GAFAはDXによってアメリカや世界を変革したが、GXにおいても既存の仕組みを新しく置き換えていく必要がある。ただし、それは一気呵成にではなく、「low-hanging fruit」、つまり徐々に地道に進めることが非常に重要になるというのだ。
時間:12:38
収録日:2023/11/01
追加日:2023/12/26
キーワード:
≪全文≫

●DXとアメリカ経済の進展


 今日は少しGX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)について、お話しさせていただきたいと思います。

 ご存じのように、DXというのはデジタル技術をテコにして社会や企業のビジネスモデルを大きく変えて、経済を大きく前進させてみたいと(いう動き)。GXのほうはグリーンですから、気候変動問題対応で、再生可能エネルギーや水素ネットワーク、電気自動車のような新しいものへのチャレンジによって社会変革をすることで、経済を大きく変えてみたい(という動き)。これが今、日本の政策の中で非常に重要な意味を持ってきています。

 この背景にあるのは、特にDXについては、これが世界的なトレンドになってきているということです。アメリカが最も顕著ですが、GAFAに代表されるように、デジタルテクノロジーが社会を変える原動力になって成長につながっている。そこで、日本でもこれが非常に大事だということだろうと思います。

 このキーワードは「創造的破壊」ということに尽きると思います。創造的破壊は、皆さんもご存じだと思いますが、20世紀の有名な経済学者シュンペーターによると、「資本主義経済がサクセスする一番のポイントはイノベーションであり、イノベーションの一番の本質は創造的破壊である」と。つまり、既存の仕組みを壊していくことによって、その先に新しいものが生まれていく。それによって初めて本質的な成長が出てくるのだということです。

 アメリカの社会はまさにそういう状態です。この10年のアメリカの経済発展について、株価で見れば最も顕著ですが、GAFAにマイクロソフトも入れていいと思いますけれども、デジタルイノベーターの存在感が圧倒的になっています。もしも、ああした企業がなければ、アメリカの経済も日本と大して違わないパフォーマンスだったと思います。

 例えば、GAFAとは全然違うGMやフォードがトヨタに比べて特に優れているとも思えませんし、GEが日立に比べて優れているわけでもない。アメリカの経済が圧倒的に強くなったのは、デジタル企業であるグーグルやアップル、フェイスブックやアマゾン、マイクロソフトが、まさに社会を破壊しながら新しくつくってきたということだと思うわけです。


●GX戦略の難しさと創造的破壊


 ですから、日本にとってもDXが非常に重要であるということは重要で、したがってDXを進めるために今、政府もいろいろな策を講じています。今日はこれについてはあまりお話しする時間もスペースもありませんが、これとの絡みで、GX(グリーントランスフォーメーション)について、お話しさせていただきたい。

 グリーントランスフォーメーションもデジタルトランスフォーメーションに似たところがあって、やはり創造的破壊です。これまでやってきたことを破壊する、あるいは否定することによって、新たな成長を築く。例えば、ガソリン車に乗って移動するとか、石油や天然ガスや石炭を燃やして発電して経済のエネルギーを確保するという、これまでのやり方を否定しているわけです。その代わりに新しく再生可能エネルギーをもっと利用する。あるいは自動車の電気化として電気自動車のようなものを利用していく流れになるわけです。

 その部分では似たような面があるのですが、日本の政府がグリーントランスフォーメーションは単に気候変動問題に対応するためにどうしても日本がやらなければいけないという社会課題を解決するためだけではなく、それをやることによって経済が大きく成長できるチャンスがあると考えているのは、まさに創造的破壊につながるからだろうと思います。

 ただ一つ、やはり違うところがあって、デジタルトランスフォーメーションの場合には、デジタル技術そのものが創造的破壊を引き起こします。例えば、チャットGPTのような生成AI、クラウドの進化など、次々に新しいデジタル技術が出てくると、既存のビジネスモデルが破壊されてしまい、その先に新しいビジネスモデルができる。つまり、技術そのものに創造的破壊をする力があるわけです。

 ところが、グリーントランスフォーメーションの場合には、ガソリン車から電気自動車に替えるとか、あるいは化石燃料で発電するのを再生可能エネルギーに替えていく、そのこと自体が既存の仕組みを破壊したり変えたりするわけですが、それは技術を破壊するわけではなく、社会的ニーズを実現するためにそれをやる。おそらくここに、GXの戦略の難しさがあるのだろうと思います。


●GX経済戦略と温室効果ガス削減目標


 それに関連して、今の日本の政府の流れを見ていきましょう。

 政府は、GX経済公債あるいはGX経済戦略という形で、これから10年、2035年までに約150兆円の官民の投資を促すといっています。これは、先ほど...
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