●調査技術の開発をする「海のジパング計画」
今まで「海のジパング計画」の全体、国としての位置づけのようなお話をしましたが、今回は海のジパング計画の具体的な内容について申し上げたいと思います。
ターゲットとしているのは、「海底鉱物資源」です。しかし、ここで気をつけなくてはいけないのは、これを「海底鉱物資源の開発」とは言っていないところです。ここは若干難しい問題が府省の間で発生したのです。本来は開発するのは経済産業省ですから、経産省がわれわれと合体して、そこも含めた形でやりたいと思い、そうするような計画を練っていたのですが、経産省が降りてしまいました。それで、具体的には文部科学省、国土交通省が中心になってやることになったのですが、開発は経産省だから、文科省、国交省がやるのはその手前の資源調査技術をメインにしなさい、ということになりました。これは非常に残念なことなのですが、実際の資源開発を加えるともっと大きなものになってしまうかもしれません。しかしながら、海のジパング計画はこの調査技術を開発する、あるいは、開発するために必要な調査技術を開発する、と言ってもいいかもしれません。
●重要な資源保障という考え方
実際、日本の周りの海はこのようになっていて、今まで申し上げましたように、山のようにコバルトリッチクラストが存在する可能性があるところもあり、それから、熱水地帯も広がっています。また、レアアース泥もあるというわけです。こういう広い地域は、実は、これまで言ってきませんでしたが、日本の排他的な経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)と言われています。そのEEZと言われている日本周辺の広大な海、国土面積の12倍を超える日本の大陸棚、非常に広い面積を日本が経済的にコントロールできるということなのです。そこに資源があるから、資源としての国家安全保障となるのです。
要するに、安全保障とはいろいろあって、資源保障は非常に重要なところです。例えば、日本も第二次世界大戦が始まった時に、アメリカが原油を日本に売らないと言ったことが非常に大きなキーになっていると言われていますが、それは資源の安全保障です。銅や鉄などを経済産業省がやっているのですが、それが海にあるということですね。そういう論点に立ってやっています。
これが日本のEEZなのですが、灰色のところは200海里以内というところですが、この橙色のところは、最近になって新たに延長大陸棚として国連から承認されたところです。ここも日本の大陸棚として、EEZとして扱ってよいということが認められました。この黄色いところも申請しているのですが、ここは今ペンディングです。それから、この間、南鳥島の西側も申請しているのですが、ここは駄目と言われており、リターンマッチを考えているというようなところでしょうか。こうしたこの広い海域に鉱物資源、もちろん最初に申しましたエネルギー資源や水産資源も、山のようにあるわけです。
●ジパング計画のターゲットとなる資源と目標
海のジパング計画がターゲットとしているのは、この三つのもの、熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、レアアース泥です。マンガン団塊が入っていないことにご注意ください。また、エネルギー資源であるメタンハイドレートや海流発電もターゲットには入っていません。
絵に描くとこのような絵があって、それぞれこういう資源があるということは、今まで申し上げてきました。特徴的なのは金です。熱水鉱床には金がある。それから、コバルトリッチクラストにはプラチナがあるというようなことです。この図は海のジパング計画で作った例ですが、ご覧のようにそれぞれ、コバルトリッチクラスト、レアアース泥が分布しているというわけです。
そして、何を目指すのかということですが、技術的な目標として「海のジパング計画は海底熱水鉱床、コバルトリッチクラストやレアアース泥等―一応ここに「等」はついていますが―の海底資源を高効率、従来の2倍以上のスピードで調査、探査する技術を世界に先駆けて実現します」と言っています。それから、「資源が眠る深海域において使用可能な未踏海域調査技術を確立します」という技術目標を掲げています。
社会的な目標としては、「国が主導してリスクや難度の高い研究開発を行い、(システムの小型化、高効率化を含む)、民間に技術移転をすることで日本の海洋資源調査を飛躍的に加速します」。それから産業面では、「平成30年度までに世界に打って出ることのできるような海洋資源調査産業を創出します」ということです。それから、特に環境問題ですが、これにどう対応するかということについて、グローバルスタンダードの確立、日本の調査のスタンダードを確立して、日本...