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イオンエンジンの実用化は2000年代から本格的に行われている

宇宙探査の現在と可能性(6)イオンエンジンとは-2

小泉宏之
東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授
概要・テキスト
イオンエンジンの形成のためには、さらにイオンを加速させ、その後、中和器でイオンと電子を同数吐き出させ、探査機やエンジン自体を中性に保つ必要がある。こうしてできるイオンエンジンは、すでにさまざまな形で実用化されている。(全10話中第6話)
時間:07:20
収録日:2019/06/11
追加日:2019/07/08
カテゴリー:
≪全文≫

●イオンエンジンの基本構造


 次の過程が、イオンの加速です。そのためには、イオンをこのプラズマの部屋から抜き出す作業が必要になります。

 基本的な原理としては、まずプラズマをつくっている原子に非常に高い電圧をかけます。そしてイオンを抜き出すために、容器についている薄い2枚の板のうち、下流側、つまり外側の板に負の電圧をかけておきます。こうして大きな電圧差を作っておくと、プラズマの正性質の中にあるイオンだけが外側に出ていきます。電子自体はプラスに引きつけられ、マイナスと反発する性質があります。電子が出ていこうとしても、弾かれて中に戻ってしまうので、プラスだけでは外に出ていくようになります。上のスライドは模式図です。

 実際のイオンエンジンがどのようになっているかというと、2枚の薄い板があり、そこに蜂の巣状に穴が空いています。上流と下流があるので、2つの穴がぴったりそろうようになっています。

 この穴の断面を見たのがこの図です。このスライドの右にある図では、左側が上流となるプラズマ生成側の板で、右側が外側の板を示しています。そして黄色い線で書いてあるのが、イオンが飛んでいく方向を簡易的な計算によって示したものです。イオンが外側にある板に引きつけられて真ん中に集まり、うまく壁に当たらずに外側に出て行く様子が描かれています。うまく壁に当たらずにイオンだけが外に出て行くように、両者の穴や位置関係を調整してあります。

 出て行くときの速度は、この2枚の板の電位差によって決まります。この電位差を大きくすれば、外に速い速度で出て行くことができます。


●イオンを取り出すと、電子が引き戻す作用を起こしてしまう


 こうしてイオンだけを取り出して終わりかというと、そうではありません。もう一つ重要な段階があります。イオンと同数の電子を出さなければならないのです。その役割を行うのが「中和器」と呼ばれるものです。

 仮に中和器がないと何が起きるかということを考えてみます。

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