宇宙探査の現在と可能性
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
はやぶさで有名になった「イオンエンジン」の仕組みは?
宇宙探査の現在と可能性(5)イオンエンジンとは-1
小泉宏之(東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授)
有人火星探査のためのポイントは、総質量とコストをなるべく少なくすることである。そのための方策として挙げられるのは、電気推進機である「イオンエンジン」だ。イオンエンジンの要となるのは、イオンを発生させるためのプラズマ生成である。(全10話中第5話)
時間:11分08秒
収録日:2019年6月11日
追加日:2019年7月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●総質量をいかに減らすことができるのか?


 前回まで有人火星探査の概算を見てきたのですが、その中で明らかになったのは、非常に大きな質量を運ぶことが必要であるということです。このように非常に大きな質量を運ばなければならない一番の要因は、秒速8キロメートル毎秒ほどかかる、火星の往復です。先ほどのロケット公式から計算したように、宇宙船自体は100トン弱なのですが、そう質量はその約10倍の1000トンに膨れ上がってしまいました。今回は、これをどうにかできないかということについて考えます。特にそのための方策として、電気推進機、あるいは「イオンエンジン」を紹介します。

 まず、イオンエンジンを使うと、ものを投げる速度である排気速度を通常のエンジンの役10倍に上げることができます。グラフを見ると、今まで宇宙で使ってきたものは3キロメートル毎秒ほどの排気速度でしたが、イオンエンジンではそれを一気に30キロメートル毎秒に増やすことができます。以下では、この可能性について見ていきたいと思います。


●はやぶさで有名になった「イオンエンジン」とは何か


 はじめに、イオンエンジンとは何かについてお話しします。そのために、まず「電気推進」と呼ばれるものを紹介させてください。

 電気推進とは、ものを投げるロケットエンジンの1つのことで、ものを投げるもともとのエネルギーとして、電気の力を使っています。電気エネルギーを使ってものを投げるために、電気エネルギーを運動エネルギーに変換する装置が「電気推進機」です。

 先ほど言ったように、この電気推進機を使うと10から100キロメートル毎秒という非常に速く物を投げることができます。いろいろな電気推進機があるのですが、よく使われているのは大体20~30キロメートル毎秒のものです。もっと高い100キロメートル毎秒にすることも可能です。

 これは構造的にはどうなっているのでしょうか。まずやはり、投げる物は持参しなければなりません。何か持ってくる必要があります。ただし、そのためのエネルギーは基本的に太陽光から発電し、その電力で物を投げます。そのため、システムとしてみると、電力と物か...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(2)プロテスタントと「予定説」
カトリックとプロテスタントの違いは?「救済予定説」とは?
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝