宇宙探査の現在と可能性
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
大電力・大推力作動に最適な「ホールスラスタ」の可能性
宇宙探査の現在と可能性(8)大電力電気推進-2
小泉宏之(東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授)
膨大な電力を発電するためには、軽量の太陽電池パネルを用いるという方法もある。またイオンエンジンの他にも、電気推進機にはホールスラスタがある。有人火星探査をシミュレーションする際には、この技術も非常に重要である。(全10話中第8話)
時間:8分06秒
収録日:2019年6月11日
追加日:2019年7月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●太陽光パネルの質量を想定する必要がある


 2000キロワットを発電するためには、どれくらいのパネルが必要なのでしょうか。仮に宇宙ステーションで使っている太陽電子パネルを使うと、そのまま20倍にした場合、およそ60トンの重さが必要になります。そうすると、宇宙船全体でほぼ同じ重さになってしまいます。そこで、以下では研究開発中の新しい技術を導入して、見積もりを進めてみたいと思います。


●薄膜軽量太陽電池パネルの使用を想定してみる


 JAXAが「DESTINY+」という計画を進めています。これはまだ正式なプロジェクトになっていないのですが、このキーテクノロジーの1つに、「薄膜軽量太陽電池パネル」というものがあります。これは、質量あたりの発電量が今までの3倍という、非常に優れた太陽電池パネルです。これを使うと、約2000キロワットを発電するためのパネルは20トンで済むことになります。

 もちろん、太陽電池パネルを増やすといっても、ロケットに搭載できるのか、宇宙で展開できるのか、軌道上の組み立てはどのように行うのか等、さまざまな問題があります。ここではこうした問題をさしあたりおいておき、このDESTENY+で使おうとしている薄膜軽量太陽電池パネルを使って、約2000キロワットが20トンで済むようになると想定してみます。

 この技術を使うことを仮定すると、先ほどの概算スライドに、軽量太陽電池と電気推進機の24トンがプラスされます。エンジン自体も必要ですので、その重さを4トンとして計量しています。イオンエンジンとして4トンは少し軽いのですが、太陽電池パネルと電源とエンジン本体で、24トンで済むだろうという想定です。そうすると、トータルが92トンになります。先ほど70トンだったものが、90トンになる程度の増加で済むということです。

 これをうまく使い、イオンエンジンで1000キロワットを出力した場合、再計算すると、出発質量は約200トン程度で済みます。燃料型エンジンの場合、地球出発時の重さが750~800トンだったので200トン程度で済むということと、さらに発電量が20倍になっており加速時間も1年であるということを考えれば、より効率が良くなっているといえます。

 イオンエンジンの場合、軌...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
概説・縄文時代~その最新常識(2)縄文時代の開始時期に関する三つの説
縄文時代の始まりはいつから?…三つの説の特徴とは
山田康弘