宇宙探査の現在と可能性
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
火星探査はどのような形で行うのかを考える
第2話へ進む
人工衛星や探査機のエンジンの最も重要な役割とは?
宇宙探査の現在と可能性(1)ロケットと軌道の基礎-1
小泉宏之(東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授)
現在の宇宙推進工学の知見からすると、将来的にどのような宇宙探査が可能なのか。有人火星探査を事例として、ロケットエンジンの仕組みや最新技術を解説する。第一に重要なのは、ロケットエンジンの役割を理解することである。(全10話中第1話)
時間:13分32秒
収録日:2019年6月11日
追加日:2019年7月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●有人火星探査のためにはどんな技術が必要か


 こんにちは。東京大学の小泉です。宇宙推進工学を専門としています。今日は、「宇宙探査の現在とこれからの可能性」ということで、ロケットエンジンをメインにしながら、有人火星探査を例に取り、これからどのような宇宙探査が可能なのか、そのためにはどういった技術が必要なのか、ということをお話しします。

 まず、ロケットエンジンの基礎からお話を始めます。

 宇宙探査機のロケットエンジンやその軌道はどのようなものなのでしょうか。また、これらによって宇宙探査機はどうやって宇宙を旅しているのでしょうか。そして、そのお話の後には、有人火星探査の概算を行い、今ある技術を使うとどのような探査になるのかについて見ていきます。

 結論からいえば、有人火星探査は、非常にたくさんの質量を運ばなければならないという探査です。この問題をクリアするこれからの可能性として、ここでは2つ、キーとなる技術を紹介したいと思います。

 一つはイオンエンジンと呼ばれる、最近の「はやぶさ」で非常に有名になった技術です。これを使うことで何がどう良くなるのかということをお話しします。もう1つは、イオンエンジンよりもさらにSFチックなのですが、スペースマニングという技術についてお話します。


●宇宙空間では、動いているものはずっと飛び続ける


 まず、ロケットと軌道について、少し基礎的なことからお話しします。

 地球の周りを飛んでいる人工衛星の仕組みを説明するときに、非常に速い速度でボールを地表に沿って投げたときの例えがよく使われます。ボールを非常に速い速度で投げると、もちろんボールは遠くに落ちます。その速度をどんどん速めていくと、そのうちに投げたときのボールの軌道である曲線が、地球と一緒になり、ぐるりと地球を回ります。

 これはもちろん正しい話なのですが、もう少し広く地球の周りを飛ぶ、人工衛星の原理を本質的に説明します。

 まず、万物の真実として、宇宙にある物体は基本的に障害物さえなければ飛び続けます。そのため、物体が地球の表面に沿いながら飛び続けるには、秒速7.9キロメートルという非常に速い速度が必要です。ただし、例えばス...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味
『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
〈続〉認知バイアス~その仕組みと可能性(1)概念のバイアス〈前編〉
非合理なのに誰もがハマる「概念のバイアス」とは
鈴木宏昭