「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『宇宙の5つの時代』に書かれた宇宙の運命と熱的な死
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(11)宇宙の運命と5つの時代
岡朋治(慶應義塾大学理工学部物理学科教授)
宇宙は最近再び加速膨張を始めたということが明らかになった。そして、暗黒エネルギーが実際にあるということが証明されたのである。この発見から、宇宙膨張は永遠に続くということが分かったのだが、宇宙はいったいどこに向かうのか。1999年刊行の『宇宙の5つの時代』をもとに宇宙の運命について解説する。(全12話中第11話)
時間:9分19秒
収録日:2020年8月25日
追加日:2021年2月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●宇宙の加速膨張と暗黒エネルギーの発見


 暗黒エネルギーに関係する発見が、実は1998年になされています。暗黒エネルギーについては、宇宙エネルギー放射(宇宙背景放射)の異方性からも導かれますが、それとは別に、1998年に(宇宙の)加速膨張というものが精密に測られたのです。

 サウル・パールムッター氏のグループと、ブライアン・P・シュミット氏とアダム・リース氏のグループが行っていたものは、あるタイプの超新星爆発(これは明るさが決まっている超新星爆発)を精密に測り、それが起きた銀河までの距離が精密に求めるというものです。そして、(銀河の)後退速度はドップラー効果からかなり精密に求められます。

 そうしますと、実は宇宙は、最近になって(最近といってもここ50億年程度ですが)再び膨張が加速を始めたということが明らかになったのです。

 そこで、彼らの研究結果によるものですが、そこから評価した暗黒エネルギーの存在量は、宇宙の65パーセント程度になります。これは、先ほどの宇宙背景放射からの値とさほど変わらない。宇宙全体で平均化すると、10-30g/cc、1cm3あたり10-30g 程度のエネルギーに相当します。

 暗黒エネルギーが実際にあるということが、別の観点から証明されたということになるわけです。この功績をたたえられまして、パールムッター氏、シュミット氏、リース氏は2011年のノーベル賞を受賞しています。

 この発見で重要なのは、加速されるということは減速に転じることはもはやあり得ないということです。宇宙の暗黒エネルギーが真空エネルギーによるものだとすると、これ以降は金輪際、物質の重力がこの膨張に勝つということはあり得ないということになるのです。そうしますと、宇宙膨張は永遠に続くということです。


●宇宙はどこに向かうのか


 そうしますと、宇宙はどこに向かうのかということを考えたくなるわけです。実はそれを考えた人がいます。

 その前に、簡単に宇宙の最も基本的な構成要素である「恒星の一生」についておさらいしておきます。

 恒星、つまり星はどのように生まれるかというと、まずはガスが濃密な領域、銀河の中では「星間分子雲」とよばれるような領域で重力収縮することによって、星...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎