●宇宙の加速膨張と暗黒エネルギーの発見
暗黒エネルギーに関係する発見が、実は1998年になされています。暗黒エネルギーについては、宇宙エネルギー放射(宇宙背景放射)の異方性からも導かれますが、それとは別に、1998年に(宇宙の)加速膨張というものが精密に測られたのです。
サウル・パールムッター氏のグループと、ブライアン・P・シュミット氏とアダム・リース氏のグループが行っていたものは、あるタイプの超新星爆発(これは明るさが決まっている超新星爆発)を精密に測り、それが起きた銀河までの距離が精密に求めるというものです。そして、(銀河の)後退速度はドップラー効果からかなり精密に求められます。
そうしますと、実は宇宙は、最近になって(最近といってもここ50億年程度ですが)再び膨張が加速を始めたということが明らかになったのです。
そこで、彼らの研究結果によるものですが、そこから評価した暗黒エネルギーの存在量は、宇宙の65パーセント程度になります。これは、先ほどの宇宙背景放射からの値とさほど変わらない。宇宙全体で平均化すると、10-30g/cc、1cm3あたり10-30g 程度のエネルギーに相当します。
暗黒エネルギーが実際にあるということが、別の観点から証明されたということになるわけです。この功績をたたえられまして、パールムッター氏、シュミット氏、リース氏は2011年のノーベル賞を受賞しています。
この発見で重要なのは、加速されるということは減速に転じることはもはやあり得ないということです。宇宙の暗黒エネルギーが真空エネルギーによるものだとすると、これ以降は金輪際、物質の重力がこの膨張に勝つということはあり得ないということになるのです。そうしますと、宇宙膨張は永遠に続くということです。
●宇宙はどこに向かうのか
そうしますと、宇宙はどこに向かうのかということを考えたくなるわけです。実はそれを考えた人がいます。
その前に、簡単に宇宙の最も基本的な構成要素である「恒星の一生」についておさらいしておきます。
恒星、つまり星はどのように生まれるかというと、まずはガスが濃密な領域、銀河の中では「星間分子雲」とよばれるような領域で重力収縮することによって、星の赤ちゃんであるところの「原始星」が生まれます。
そして、原始星の中で核反応に火がついて、「主系列星」という段階へと進化します。主系列星は、安定的に水素をヘリウムやさらなる重元素に転化させながら進化していきます。そして主たる燃料である水素を使い果たしたところで、「赤色巨星」化します。最近、「ベテルギウス、(そろそろ)やばい」などという話を聞きますが、それも一つの赤色巨星という赤い膨張した星のことを指します。
軽い星の場合は、その赤色巨星はそのまま膨張していって外層部が散逸していき、中に電子の縮退圧で支えられた「白色矮星」が残ります。これは内部で核反応を起こさない星で、そのまま冷えていくような星です。
重い星になりますと、さらに中心での核反応が進み、最終的には鉄まで合成されます。鉄は燃えませんので、それを使い果たした段階で大爆発を起こします。これが「超新星爆発」で、その爆発の後に中性子から成る「中性子星」を残す場合があります。あるいは、重い星の場合は、中性子でも支えきれない芯を残すので、それは「ブラックホール」になるといわれています。
これらの白色矮星や中性子星、そしてブラックホールというものは、一般に「縮退星」と呼ばれます。縮退星というのは、電子であったり、中性子であったり、縮退圧という量子力学的な圧力で支えられた星で、もはやそれ以上燃えない星のことです。なので、これらは冷えていくだけの星です。
ということで、恒星の一生は、超新星爆発、もしくは赤色巨星の外層散逸によってガスが空間にまき散らすという効果はあれども、一部分は縮退星へと固定されていくのです。白色矮星だったり、中性子星だったり、ブラックホールだったり、です。このように、ある割合は宇宙から失われていき、それ以上活動しないものになっていくわけですね。これを考えると、宇宙は徐々に活動しないものへと転化されていくということです。
●宇宙は「5つの時代」に分けることができる
これに基づいて、『宇宙の5つの時代』という本を書いた研究者がいます。フレッド・アダムズ氏とグレッグ・ラフリン氏です。彼らの執筆した『宇宙の5つの時代』(1999年刊行)によると、宇宙が無限に膨張していくのであれば、次のような進化をたどるであろうということです。
それは5つの時代に...