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「宇宙背景放射の異方性」発見で分かった驚くべき事実

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(10)ビッグバン後の進化と宇宙の組成

岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
情報・テキスト
ビックバン後、現在に至るまで、宇宙はどのように進化していったのだろうか。宇宙開闢から38万年後に「宇宙の晴れ上がり」が起きて、90億年で加速膨張が再開され、138年後に宇宙が誕生する。宇宙の年齢が分かったのは「宇宙背景放射の異方性」の発見のおかげだが、それとともに分かった宇宙の組成については、驚くべきことが明らかになっている。それは、われわれがほとんど何も知らないということである。(全12話中第10話)
時間:08:14
収録日:2020/08/25
追加日:2021/02/13
ジャンル:
≪全文≫

●宇宙は138億歳~ビッグバン後の進化をたどる~


 ということで、ビッグバンがようやく始まったわけです。では宇宙がどうやって進化していくのか、概略を示します。

 まず、ビッグバン直後はとても熱いので、物質はすべて輻射の形をしています。光のようなものですが、そういうものがドロドロに溶けた状態です。

 そして、宇宙は膨張して、急速に冷えていきます。冷えていきますと、重いものから消滅していきます。まず陽子と反陽子が対消滅を起こして、光子になります。そして若干の陽子が残って、物質が宇宙に残ることになります。それが宇宙開闢から10-6秒程度に起きると考えられています。

 その後、数十秒たちますと、今度は軽めの粒子である電子が陽電子と対消滅をして、消えていきます。そして光子になるわけですが、その電子が若干、今の宇宙に残ることになります。

 さらに時代は下って、3分ほどたちますと徐々に原子核が合成されていきます。陽子や中性子が結合していくことで、水素だけではなくて、ヘリウムやリチウム(原子核)が合成されます。この時間は3分程度と考えられています。

 その後しばらく、冷えるにしたがって色々なことがあるのですが、重大なことは、38万年たった後、「宇宙の晴れ上がり」が起きることです。これは具体的にいうと、プラズマが再結合して原子になるところです。プラズマは、自由に電子と陽子が行き来していますので電磁波を自由に放射する状態です。原子になってしまいますと、それは自由にならない。「スペクトル線」という非常に限られた周波数帯でしか放射を行うことができないことになります。なので、プラズマ状態から原子状態になったときに、宇宙は透明になると考えられます。

 太陽は表面しか見えませんよね。それは太陽が(濃密な)プラズマの塊だからです。ただプラズマが原子化すると(ほぼ)透明になります。なので、38万年以降は、宇宙は透明になる。透明になって、それ以降はスカスカに光子が通じてくるということになります。

 スライドの右の図でいうところの一番上が宇宙開闢で、一番下が現在なのですが、「宇宙の晴れ上がり」は上の方にあります。この晴れ上がったところが最後に熱かった宇宙が見えるところです。つまり、「宇宙マイクロ波背景放射」は、この晴れ上がった直後の38万歳の宇宙を見ているということに相当します。

 さらに時代は下ります。宇宙開闢から2億年たって、ここで初めて天体が形成されます。初めてできる天体は、巨大な星だといわれています。その星は中心で元素を合成して、割と速やかに爆発を起こして亡くなるということになりますが、その亡くなってまき散らかしたガスが、またさらに次の星の原料となったりするわけです。そういうことを繰り返して、(宇宙の)元素組成はどんどんと進化していくのです。

 さらに時代は下っていき、その中で星同士が重力的に集まってきて星団を成し、それが銀河を成し、銀河が銀河団を成す。そうしたことを繰り返していって、どんどんと構造が成長していきます。

 (そして)なぜだか分かりませんが、90億年程度たったところで、宇宙膨張は加速されます。これは、おそらくはアインシュタインの宇宙項が効き始めたせいだと考えられていますが、宇宙がだんだん広がっていき、物質による重力の効果よりも、その宇宙項による斥力が勝ち始めます。そうすると、宇宙は加速膨張を始めるのです。それが90億年程度たったところだと考えられています。

 そして138億年たったのが現在です。宇宙は138億歳だと考えられています。これがビッグバン後の進化の概略です。


●「宇宙背景放射の異方性」発見と宇宙の組成における驚くべき事実


 「宇宙背景放射(宇宙マイクロ波背景放射)」に、実は宇宙のいろんな情報が仕込まれています。宇宙マイクロ波背景放射は発見当時、非常に等方的であるといわれていました。(しかしこれには、)とても小さなものですが、異方性があります。この異方性は、宇宙初期の条件を反映するものです。それを丁寧に解析していくと、宇宙の年齢と宇宙の組成が分かります。

 その結果を示しますと、まず宇宙マイクロ波背景放射の異方性は、(相対的な)大きさにしてだいたい10万分の1程度です。これを丁寧に観測したものがスライドの右の三つの図です。一番上は「COBE」という衛星によって、1992年に発表された観測結果です。COBEが、10-5程度の相対的なこの背景放射の異方性を初めて検出しました。

 これが、さらに2003年の「WMAP」によって精密化されました。COBEの結果が確認されるとともに、より細かい構造まで分かるようになっています。さらにはPlanck衛星の結果が2013年に報告され、も...
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