●古代エジプト、インドの神話的な宇宙観
われわれが知っている宇宙の知識は、概観すると前回お話したような感じになりますが、これは昔から分かっていたことではありません。よって、ここで、人類がどのように宇宙というものを見てきたかというものを簡単におさらいしておきたいと思います。
まず、古くは神話的な宇宙観が支配的であったといわれています。
例えば古代エジプトですが、紀元前3000年頃エジプト文明の時に考えられていた宇宙観は神話に根差したもので、スライドの図のような感じだと考えられていました。
上に覆いかぶさっているのは、天空の女神「ヌト」で、下に寝ているのは大地の神「ゲブ」です。この2人は、兄妹でありながら夫婦であるわけですが、その間に座っているのが大気の神「シュー」です。このヌトとゲブが仲良くしていたところを、シューが引きはがして、天と地が分かれた。そういった神話があるということになっています。スライドをご覧いただくと、天空の女神ヌトの体に星がびっしりと描かれているのが分かります。これが古代エジプトの宇宙観です。
一方、古代インドですが、これは紀元前15世紀頃の宇宙観になります。これもまた神話によるものですが、創造神「ブラフマー」が太鼓を鳴らして宇宙を創造し、維持神「ヴィシュヌ」がそれを維持し、破壊神「シヴァ」がそれを破壊するというサイクルがあるといわれています。
そして宇宙観として、スライドにある絵のようなことがまことしやかに語られているわけです。これはどういうものかというと、真ん中にすごく高い山があって、そのすごく高い山は階層構造を成している。その階層ごとに住んでいる神様が違う。一番上には最高神であるブラフマーが住んでいるらしいが、その下にゾウが何匹かいて、その山を支えている。さらにその下に半球面状の大地があって、その大地の下にまたゾウがいて、ゾウの下には巨大なカメがいて、すべてを巨大なヘビが支えていて、ヘビは天空も覆っている。
ということで、見ればかわいいのですが、こういう宇宙観が古代インドでは信じられていたという話がまことしやかに語られていて、私もそれを信じていました。
今回いろいろ調べるにあたって、この絵が最初に出てきました。スライドの下のほうにちらりと書いてありますが、これは1822年のドイツの本なのです。実は著者のドイツ人がいい加減なことを書いたのではないかというのが、最近の定説のようです。よって、ヘビとかカメとかゾウに関しては、少し疑わしいということです。
ただ、古代インドでは、真ん中に山がそびえていて、その下に大地があるという階層構造について、確かにいろんな文献に残っているそうなので、それに関しては信じてもいいと思われます。
●古代中国の合理的な宇宙観
時代は下りまして、古代中国に入ります。
古代中国では、紀元前2世紀頃にいくつかの宇宙論的な説が挙げられています。合理的な宇宙観で有名なのは「蓋天説」です。スライドの絵で示しましたが、地面は四角いのですね。そして、天は円盤状を成していて、その円盤が回っている。この回っている円盤の上に太陽とか星などがある。太陽が近くに来たとき、地上は昼になっており、遠ざかったとき、夜になっている。このように回転する蓋状の天(円盤の天)というのが蓋天説です。
ただ、これではいろいろ説明がつかないこともあるので、その代わりに出てきたのが「渾天説」です。これは半球に水が浸されていて、天は球状を成しています。そして、水の上に地が浮いており、そこで天球は回るわけです。その天球に星や太陽が固定といいますか、存在するということになっているのが渾天説です。回転する球状の天という見方ですが、当時はこちらのほうが信じられるようになってきたようです。
それ以外にも実は「宣夜説」があり、これは今でいうところの無限宇宙論に近いものです。ただ、これについては、渾天説に押されて下火になり、消えていってしまうという運命をたどります。
ということで、古代の中国の宇宙観では渾天説が割と信じられていたということです。
●天動説の誕生
合理的な宇宙観について、外せないのは古代ギリシアです。ギリシアにおいては、紀元前6世紀頃から、ギリシア哲学が発達してきて、その中で天文学も哲学の一部として発達してきました。
古くはピタゴラスが「大地は球形である」という「地球説」を唱えています。ピタゴラスは、「万物は数である」といった方です。「すべては数で説明がつ...