大国主神に学ぶ日本人の生き方
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ケア、エコロジー、ガバナンス、アート…現代へのヒント
大国主神に学ぶ日本人の生き方(2)大国主神の「4つの現代的意味」
哲学と生き方
鎌田東二(京都大学名誉教授)
われわれ現代の人間は大国主神について、どのような点を学べるのだろうか。大国主神の神話を通して得られる現代的意味として、鎌田氏は、ケア、エコロジー、ガバナンス、アートという4つの観点を提示する。けっして一方的ではなく、「助け、助けられる」関係としての「ケア」。熱帯化する日本で、サステナブルなあり方を再構築する「エコロジー」。対立と格差を超えて持続可能な統治を実現する「ガバナンス」。大国主神が持つ三種の神宝……生かすものとしての太刀と弓、そして神聖楽器の琴が象徴する「アート」。それぞれどのようなことなのか。具体的に解説する。(全9話中2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分39秒
収録日:2023年8月8日
追加日:2023年12月17日
≪全文≫

●ケア…一方的ではなく「助け、助けられる」関係


―― では最初に先生にお聞きするのは、そもそも大国主神の全体的な性格はどのようなものか。その部分をぜひお聞きできればと思います。

鎌田 この『悲嘆とケアの神話論ー須佐之男と大国主』という本の中で、最後の結章の第6節「痛みとケアの神としての大国主神」において、4つの現代的な意味合いを大国主神からくみ取る、といった捉え方を提示しました。

 現代的な課題としては、まず第1に「ケア論」の観点があります。コロナウイルスに苦しんできた私たちにとって、老齢者が亡くなっていくケースが非常に多かった。ですから、医療、看護、介護、ケアは非常に重要なテーマとして、より切実になってきたわけです。

 そしてその際に、「助ける・助けられる」「ケアする・ケアされる」という行為は、決して一方的ではない。

―― 一方向ではないのですか。

鎌田 ケアする側が相手のレスポンスや対応によって、ケアされることもある。例えば優れた教師は生徒から多くを学びます。

 つまり、生徒に教えるという一方的、一方向的なことで終わるわけではなく、生徒からのレスポンスによってどれだけ深いことを学び取り、またさらにその生徒にフィードバックできるかということが、優れた教師の有り様の典型だと思います。

 まさに大国主はそのような神様で、「ケアする・ケアされる」という授受関係、応答関係をうまく循環させているのです。このケア循環といったものの形成は、非常に大きな意味があります。


●エコロジー…熱帯化する日本?サステナブルなあり方の再構築


鎌田 第2番目として、現代の自然災害の頻発を見ても、人間が作り上げていった文明の負の遺産によって、地球環境はここまで異様な形で歪んできています。「ホメオスタシス(生体恒常性)」のようなものはほぼないといえるような状態です。

 私は今日(収録日:2023年8月8日)、京都から新宿に来ましたが、東京駅に降り立って新宿まで来る間に「もう日本は熱帯になったな」と思いました。

―― そうですね。

鎌田 本当に熱帯雨林の中を歩いているかのようです。タイや沖縄のほうが乾燥しているので、まだ過ごしやすいのではないか。この湿気の中でこれだけの暑さがある。この湿度と暑さは、やはり異様な状態です。こういった状態が、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(1)アフォーダンスとは何か-1
トップアスリートが語る究極の「アフォーダンス」とは
佐々木正人
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(2)国家戦略目標の転換
経済発展から「国家の安全」へ…転換された国家戦略目標
垂秀夫
編集部ラジオ2025(22)長谷川眞理子先生の「子育て」講義
生物学からわかる「ヒトの配偶や子育て」で大切なこと
テンミニッツ・アカデミー編集部
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
「集権と分権」から考える日本の核心(7)人間の性と今後の「集権と分権」
ロシアを見れば明らか…正義を唱えても優るのは人間の性
片山杜秀
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏