●『古事記』の重要な2つのキーワード
―― その大国主神の背景になるものとして、「むすひ」と「修理固成」があります。この2つは、これまでの講義でもお話しいただいています。
鎌田 そうです。キーワードでしたね。
―― すでにお話しいただいているので、ここでは簡単にご説明いただくと、どういうことになるでしょうか。
鎌田 今までの日本神話の、特に『古事記』におけるメッセージのキーワードを2つ挙げよと言われれば、私は「むすひ」と「修理固成」を挙げます。「修理固成」をどう読むかはいろいろな説があるのですが、「おさめ、つくり、かため、なせ」と岩波文庫では読んでいます。それに従って見ていきます。
「むすひ」とは根源的な生成力で、その生成力は先ほど言ったような創造も生み出すけれども、破壊的な部分、死の部分をも含み持ちます。だけれども、その後もさらに創造、生成を続けていく。この根源的な生成の力が、生存の基盤にある、存在の基盤にある。
では、それをどうやって運営していくか(託された運営の有り様)。農業をするためには種が必要だし、それを育てる水が必要だし、いろいろなやり方や創意工夫があるでしょう。「修理固成」とは、まさにその創意工夫の有り様です。だから、それはテクノロジーでもあり、1つの作法でもあり、儀礼のようなものなど、いろいろなものを含みます。そして、それはある種の生存の哲学に則りながら、生存の戦略として編み出されてくる。メソッドやテクノロジーなども含みます。それが「修理固成」という言葉になる。
つまり私たちに、「この世界はどのような状態になっていても修理できる。作り直せ、固め直せ、修め直せ」といっている。要するに、なおす(リコンストラクション、リプロダクション)、再び新たにそれを甦らせる、あるいは甦らせることができなくても再構築(リメイク)していくことができる。
映画などでもリメイクされたカバー曲などがあるでしょう。神話にもいろいろなメッセージがあって、伝わっていくということはリメイクできるからなのです。そのリメイク力がないと、生き延びられないのです。
「同じものを同じ形で」というのは、創業者が替わって2代目、3代目はできません。でも、うまくリメイクしていけば、それは続いていく。できなければ、そこで途絶えてしまい...