大国主神に学ぶ日本人の生き方
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
大国主神が詠んだ歌…『古事記』の歌の意味と縁結びの力
大国主神に学ぶ日本人の生き方(8)求婚の歌と縁結びの力
鎌田東二(京都大学名誉教授)
大国主神の歌は『古事記』上巻の中で最も多く掲載されている。はたして、どのような歌をうたっているのか。今回はその歌の数々をみていく。大国主神が詠んでいる求婚の歌を見ていくと、いかに相手の気持ちを汲み取る力のある、忖度のできる神であるかが見て取れる。鎌田氏が「古事記の中でもっとも格調高い歌を歌っている」と述べる大国主の歌の力とは「縁結びの力」だという。(全9話中8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16分17秒
収録日:2023年8月8日
追加日:2024年1月28日
≪全文≫

●『古事記』では求婚の歌が多く交わされている


鎌田 最後の最後に、大国主が実際に『古事記』の中でどのような歌をうたっているかについて、まとめていきたいと思います。

 『古事記』上巻の中で大国主の段がもっともたくさんの歌が交わされます。長い歌です。

 その中の要点をいいますと、大国主の求婚の歌なのです。恋歌です。

 「八千矛の 神の命は 八島国 妻枕きかねて 遠遠し 高志国に 賢し女を ありと聞かして 麗し女を ありと聞こして さ婚ひに あり立たし ……」

 というように歌うのです。

 自分のことを「八千矛の神」という。妻を求めている。妻を求めることは国を繁栄させていく一番の源です。どのように豊作にするかということが、生存にとって、むすひの力にとって、重要になります。そうすると、縁結びの神様も様々な縁を結んでいく。その1つが恋という形で子どもを作るということにもなり、それが様々な豊作や豊穣にもつながっていく、といった論理と構造になるわけです。

 賢し女(賢い女)がいると聞いたら、その賢い女性のところへ行って呼びかけ、そして子どもをもうける。そうすることによって繁栄を、次の命へとリレーをしていく。そのようなことを歌うわけです。

そして、「高志(越)国の賢し女」で「麗し女」が、ヌナカワヒメ(沼河比売)だった。糸魚川の翡翠を付けた、資源を持つ土地の重要な姫神です。それに対して、ヌナカワヒメがどのような歌を歌ったか。2首、歌います。

 「八千矛の 神の命 ぬえ草の ……」

 これは「八千矛の神様(あなた/大国主)に対してしおれた草のような私のことですから」と、やや控えめに語るわけです。もう1つが、「青山に 日が隠らば ぬばたまの 夜は出でなむ ……」という歌です。

 ここで重要なのは、2つの歌の最後が「天馳使 事の語り言も是をば」と「八千矛の 神の命 事の語り言も是をば」とあることです。

 ここで、大国主(八千矛)がうたった最初の歌に戻りましょう。

 ここに、「天馳使(あまはせづかひ) 事の語り言も是をば」とあります。

 この「事の語り言も是をば」を、冒頭(第1回)で話した「琴を弾きながら語り事をして、そして言霊の歌を届け...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦