●「国生み・国作り・国譲り・国治め」というストーリーで進む日本神話
―― 皆様、こんにちは。
鎌田 こんにちは。
―― 本日は鎌田東二先生に、日本神話のあらましについて教えていただきたいと思います。鎌田先生、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、日本神話の総括的なあらすじはどのようなものでしょうか。
鎌田 日本神話を簡潔にまとめると、起承転結になっています。その起承転結の「起」は国を生む「国生み」神話です。次の「承」は、その国を作る「国作り」神話です。「転」はその作った国を譲る「国譲り」神話になり、最後の「結」はその国をどうやって統治するかという「国治め」神話になります。この「国生み」「国作り」「国譲り」「国治め」というストーリーで話が進んでいくことになります。
―― では、最初の「国生み」の部分になりますが、世界がそもそもどのようにして出来上がったのか。これはどのような理屈になっているのでしょうか。
鎌田 日本の国を生むのはイザナギノミコト(イザナギ)、イザナミノミコト(イザナミ)という神様です。そのイザナギ、イザナミの神様に「国を生みなさい」というミッションを与えるのが、「むすひ」の神々になります(「むすひ」は、『日本書紀』では「産霊」、『古事記』では「産巣日」)。
この世界を生み出す大きな根源的な力が「むすひ」といわれていて、タカミムスヒノカミ(高御産巣日神)、カミムスヒノカミ(神産巣日神)が『古事記』冒頭の2番目、3番目に登場する神々になります。その神々の力が、具体的にイザナギ、イザナミの国生みにつながっていきます。だから、「むすひ」の力の表れが「国生み」という形になる、ということになります。
―― 「むすひ」とはどのような意味なのでしょうか。
鎌田 あらゆる命を生成していく根源的な力を表します。
―― 次に、人間はどのように生まれてきたかというところですが、ここはどうでしょうか。
鎌田 人間のことを「青人草」などと表現するのですが、その人間は、もともとは神々であるとされます。その神々のおおもとが、具体的には国生み神話の神様であるイザナギ、イザナミになります。そのイザナギ、イザナミという神様が人間のような体を持ち、性的な交わりをして、この国土(日本という島々)を生み、そしてさらにさまざまな神々を生んでいきます。
そのようなところから人間の起源といったものが生まれてきます。神々と人間は連続しているのですが、地上で行うミッション(働き)が与えられます。それを「修理固成」という言葉で表します。これは「おさめ、つくり、かため、なせ」といって、「この国土を維持していくため、持続可能な形にしていくために、修めていかなければいけない、作っていかなければいけない、固めていかなければいけない、そして成すべきことを成していかなければいけない。そうすることによって日本という国を持続可能な国にせよ」ということです。これらが神々から与えられたミッションであり、人間の務めであるという位置づけになります。
―― 神々の務めでもあり、人間の務めでもあるということなのですか。
鎌田 そうですね。神と人間は連続していますから。
●祭りと歌――日本の文化の始まりを表わす2つの起源
―― 次は、文化がどのように始まったかというところです。
鎌田 日本の文化については根源的に2つあります。1つは祭りです。もう1つは歌で、宮中の歌会始の歌もそれにあたります。では、その祭りと歌がどのようにして始まったのかについて、どう語っているか。
スサノオノミコト(スサノオ)という神がいて、乱暴狼藉を働いたので、姉のアマテラスオオミカミ(アマテラス)が岩戸に隠れてしまった。その隠れてしまった神(アマテラス)を呼び戻し、復活させ再生させていくために、今神社で行われているようなヒモロギを立てたり、鏡を作ったり、それを立てたり飾ったりして、さまざまな舞踊や芸能、神楽のようなことを行った。そして神懸り状態になり、神々が一斉に喜んで、「面白い、楽しい、みんなで歌おうよ」という状態になった。その力みなぎるエネルギッシュな場の力をきっかけに、アマテラスが(太陽の神として)再生してくる。これが祭りの起源になります。
―― 次に、歌はどうでしょうか。
鎌田 文化のもう1つの始まりが歌です。歌を初めて歌うのは、スサノオになります。スサノオは小さい時から泣いてばかりのやんちゃないたずらっ子で、親の言うことを聞かないような子だったので、2回も追放されます。追放される前、姉(アマテラス)が天の岩戸に隠...