世界神話の中の古事記・日本書紀
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『日本書紀』ではなぜ出雲神話がカットされているのか
世界神話の中の古事記・日本書紀(6)出雲神話をめぐる古事記・日本書紀の違い
鎌田東二(京都大学名誉教授)
『古事記』には国生みから国づくりまでのプロセスの中に、スサノオ、オオクニヌシの波乱万丈の物語、つまり「出雲神話」と呼ばれる部分がとても手厚く描かれている。一方、『日本書紀』はその部分がカットされている。スサノオが『古事記』にあった「接着ボンド」のような役割を果たすわけではなく、むしろ分断する役割だという。なぜ『日本書紀』はそのような描かれ方がしてあるのだろうか。(全9話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分51秒
収録日:2020年10月5日
追加日:2021年5月8日
≪全文≫

●出雲神話が手厚い『古事記』


鎌田 オオクニヌシの話も浮沈といいますか、山あり谷ありです。話は少し横道にそれますが、オオクニヌシは多くのお兄さんたちがいます。スサノオノミコト(スサノオ)が荒ぶる神で日本で最強の神様だとすれば、その子孫のオオクニヌシは最弱の神様です。

―― 弱いのですね。

鎌田 なぜ弱いかというと、お兄さんの神様がたくさんいて、お兄さんたちに平身低頭するからです。メソポタミア神話の下級神のように労働の役割を与えられて、荷物を背負って後からお兄さんたちにかしずくようにしている。それも、気だてがいいというのか心優しいというのか、嫌な仕事を全部引き受けていく。

 当時、オオナムチノカミ(後のオオクニヌシ)は求婚に行くのですが、その途中に因幡の白ウサギがいました。いろいろなエピソードがあるのですが、因幡の白ウサギは傷ついて、苦しんでいた。お兄さんたちは「海の塩水で洗って、風に吹かれていたら治るよ」という間違った治療法を教えます。ウサギはその通りにして、よりいっそう傷口がヒリヒリして拡大してしまった。

 そこへ最後に、お兄さんたちの荷物を持ったオオクニヌシが行き着く。そして、その間違った治療法を改めて、真水で傷口を洗って、蒲(がま)という植物の粉をつける。そうして、そよそよとした風に吹かれていると治ってしまった。そのような癒しの神、医療神のような神格も発現した。

 また、彼だけが姫のプロポーズに成功したりして、お兄さんたちに恨まれて2度も殺されています。2度殺されても、お母さんたちのムスヒの働きで復活しています。

 スサノオは、オオゲツヒメノカミなどいろいろな神様を殺したりもしています。機織り女はスサノオが直接殺したわけではないけれども、スサノオが原因で死んでしまう。だから、スサノオは荒ぶった暴虐の、死をもたらす破壊性のある神なのですが、オオクニヌシノカミは逆に、恨みを買ってお兄さんたちに殺される。でも、そのままではなくて、お母さんたちの庇護、愛によって生まれ変わらせられる。

 その結果、自分の先祖であるスサノオの根の国へ行き、妻となるスセリビメという女性を得ます。そのスセリビメは、スサノオの娘です。スサノオの娘が、スサノオが持っている三つの神宝(かんだから)である生太刀(いくたち)、生弓矢(いくゆみや)、天詔琴(あめののりごと)を奪いま...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦