古事記・日本書紀と世界神話の類似
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スサノオとオルフェイス、悲しみと歌でつながる男神の物語
古事記・日本書紀と世界神話の類似(2)詩の文化の共通点
哲学と生き方
鎌田東二(京都大学名誉教授)
日本神話とギリシア神話の類似点として、スサノオとオルフェイスという、夫(男)の神の存在が挙げられる。この2神はどのようなつながりがあるのか。スサノオの物語を通して、ギリシア神話との共通点をさらに挙げていく。(全10話中2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分41秒
収録日:2021年9月29日
追加日:2022年3月27日
≪全文≫

●スサノオとオルフェイスのつながり


―― さらにいうと、イザナギが穢れを払うということで体を洗い、そこでスサノオやアマテラスなど日本にとって非常に重要な神々が生まれてくるのもドラマチックな点ですね。

鎌田 穢れのあとの清らかさ、闇をくぐり抜けた先の光といったものがアマテラス、ツキヨミ、スサノオという女神、男神の誕生・顕現だったものですから、イザナギはその3人(3柱)の子どもを「三貴子(みはしらのうずのみこ:非常に尊い子ども)が生まれた」と言って特別な扱いをします。このスペシャルチルドレンが、日本における三体構造になるわけです。それぞれが日・月・海の神様になる。つまり、アマテラスは天(高天原)を支配する、ツキヨミは夜の国を支配する、スサノオは海の世界を支配することになって、世界を3つに分治させる。そうして、世界の統治の基本構造がそこで生まれてくるのです。「生」と「死」、そして「生」、と非常にドラマチックに循環的に展開していますね。

 ギリシア神話では、そういった世界創造、世界の変容といったものと結びつくわけではなく、オルフェウスとエウリュディケーの悲劇的な物語という形でひとまず終わっています。そして、オルフェウスは非常に悲しみのトラウマ、痛手を背負って、その後、悲嘆の中で生きていきます。オルフェウスは竪琴の名手です。

―― 加えて歌が非常にうまいということですね。

鎌田 そのあたりも、悲しみと歌がどう結びつくかということで、ここがオルフェウスとスサノオでつながるところなのです。

 どこがつながるかというと、スサノオは「天の詔琴」という琴を持っています。その所有者なのです。琴を弾いている場面は『古事記』の中では表現されませんが、持ち物として「3つの神宝」があります。
 
 スサノオの(6代あとの)子孫・オオクニヌシノカミ(その当時は「オオナムジ」といわれていました。他にも「アシハラノシコオ」など7つほど名前があり、いろいろな名前で呼ばれていました)が、先祖であるスサノオのもとへやってきます。「兄たちに2回も殺されてしまったので、なんとか助けてほしい」という思いでやってきたそのとき、スサノオは試練をいくつか与えます。オオクニヌシはその試練を乗り越えて、スサノオの娘・スセリビメと一緒に逃げて行きます。

 そのときに、スサノオの持ち物を奪って逃げるのですが、スサ...

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