●英雄神話に共通する「異常出生物語」
鎌田 もう1つ、類似の物語としてペルセウスの話をしておきましょう。ペルセウスの英雄神話をどのように読まれていますか。
―― 一種の冒険譚でもありますし、課題を次々と与えられて、それをクリアして大きくなっていくイメージでしょうか。神話によくあるパターンなのかなと思って読んでいました。
鎌田 2回目のシリーズ講義(神話の「世界観」~日本と世界)の中でジョセフ・キャンベルの話をしました。日本の神道とは踊りの世界のようなものだ、ダンスをしている世界のようなものだ、宇宙のダンスを表現する世界だ、と。
このジョセフ・キャンベルの有名な研究に英雄神話があり、それがあの『スター・ウォーズ』にも大きな影響を与えています。そういった英雄神話のパターンに、難題解決の過程があります。先ほど(第1話)のオオクニヌシについても、スサノオが難題を与え、その難題をクリアしていくイニシエーション・ストーリーなのです。
イニシエーションとは、例えば子どもが大人になっていく、あるレベル・位階に到達する、あるいは入学試験や入社試験に合格して新しい組織に入る、または新しい地位を得る、新しい資格を得る、といったことです。そういったイニシエーション・ストーリーを英雄神話は持っています。
ペルセウスの英雄神話も、課題解決型のイニシエーション・ストーリーの性質を持っています。
―― しかも、生まれの部分ですでに英雄になるべき要素が仕込まれているところがありますね。
鎌田 これは世界中の偉大な宗教家にいえることで、例えば、空海も空海伝説(弘法大師伝説)の中で不思議な「異常出生物語」を持っています。お釈迦さまには、摩耶夫人(母親)が自分の中に白象が入ってくる夢を見て、脇から生まれ、また生まれた途端に7歩歩いて、「天上天下唯我独尊」と言ったという話があります。これは異常であり、考えられないですよね。
―― (笑)不思議な出来事ですね。
鎌田 イエス・キリストの誕生については、マリア様が処女懐胎し、キリストが生まれてくる、聖霊によって身ごもるなど、どう考えても合理的ではありませんし、理解できません。神はこの天地を創造するほどの力があるので、そのような奇跡を起こして神の威力を示すことができる、といった極限思考からすれば可能な物語なのだけれど、われわれの通常の経験...