古事記・日本書紀と世界神話の類似
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
不老不死から老人の語り部へ、神話が語る「長老の死生観」
古事記・日本書紀と世界神話の類似(9)オシーン伝説と死生観の関係
鎌田東二(京都大学名誉教授)
日本の浦島伝説に似た話がアイルランドのオシーン伝説である。オシーン伝説とはどういった内容で、どの点が浦島伝説と似ているのか。また、両方の神話から読み取れるメッセージとは何だろうか。(全10話中9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分21秒
収録日:2021年9月29日
追加日:2022年5月15日
≪全文≫

●浦島伝説に似た「オシーン伝説」


鎌田 これ(浦島伝説)と同じような物語が、オシーン伝説としてアイルランドにあります。

 英雄物語のパターンなのですが、(主人公オシーンの)母親はかつて魔女に魔法の力でシカに姿を変えられ、(オシーンの)父親と出会うことによってシカの姿から本来の美しい娘の姿になり、結ばれるという本当に波乱万丈を経て、オシーンというシカの名前を持つ子どもが生まれてきます。

 そのオシーンが英雄の1人なのですが、オシーンの前に白馬にまたがって海を渡ってきた常若の国の王の娘ニアヴ(他にニアムなどいろいろな訳し方があるので一定しないのですが)という女性がやってきます。日本神話であれば大亀が麗しい女性の姿になりますが、アイルランドでは白馬にまたがって海を渡ってきて、そしてオシーンの前に立ち現れます。

―― いずれも海の向こうからやって来るというイメージですね。

鎌田 そうですね。そうして海の向こうからやってきて、そして誘われ、常若の国(ティル・ナ・ノーグ)に行く。そこで楽しく3年間の時を過ごすのです。

 この話は数としても日本神話と似ています。3年や300年など、3という数字が結構多い。3組の神様、三位一体、三神同一などといった具合です。

 そしてある日、故郷のアイルランドを思い出して望郷の念に浸っていたときに、ニアヴはそれに気づきます。夫(オシーン)がそのような思いをしているので相談の上、常若の国(ティル・ナ・ノーグ)から一度、故郷のアイルランドへ帰ることになります。

 そのとき、愛しい妻になっていたニアヴは「アイルランドに帰ったら、絶対にその国の土に触れてはいけない」と言います。日本の場合は、玉手箱を渡して「玉手箱を開けてはいけない」でした。

 オシーンは馬に乗ってアイルランドに戻るのですが、アイルランドに住んでいる人を助けようとして(馬から)転げ落ち、それによって土に触れてしまいます。この場面もさまざまな話型(バリエーション)があります。とにかく白馬から転げ落ちて土に触れたために、たちまち300年のときが過ぎてしまった。日本神話とまったく同じですね。3年、300年というところが、です。常世の国の1年がわれわれの国の100年だから、3年で300年。ユーラシアの両端が同じ時間の単位をもって、常世の国と常若の国(ティル・ナ・ノーグ)という話をしているのです。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ