古事記・日本書紀と世界神話の類似
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
神話には問題解決のヒントとなる物語類型がたくさんある
古事記・日本書紀と世界神話の類似(10)神話の普遍的要素と役割
鎌田東二(京都大学名誉教授)
悲劇的な物語である浦島伝説。これを語ることによって、人々にどのようなことを伝えようとしたのか。また、そもそも神話の普遍的要素とは何か。現代に生きる私たちにも神話は意味を持ち、学ぶべきことが多くある。最終話では神話の役割について語っていく。(全10話中10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分57秒
収録日:2021年9月29日
追加日:2022年5月22日
≪全文≫

●「死」と「老い」、「現実の喜び」ついて考えさせる“語りの標”


鎌田 しかし、それでも浦島太郎は生きながらえ、(物語りをしたという話は伝わっていませんが)歌を残しています。浦島太郎が海中に住む妻(常世の国の仙女の娘)と歌を交わすのです。

「常世べに 雲立ちわたる 水の江の 浦島の子が 言持ちわたる」(浦嶋子の歌)
「大和べに 風吹きあげて 雲離れ 退き居りともよ 吾を忘らすな」(仙女の歌)
「子らに恋ひ 朝戸を開き 吾が居れば 常世の浜の 波の音聞こゆ」(浦嶋子の歌)
「水の江の 浦島の子が 玉匣 開けずありせば またも逢はましを」
「常世べに 雲立ちわたる たゆまくも はつかまどひし 我ぞ悲しき」(時の人の歌)

 要するに、ここで自分がかつての妻との間に思いを交わし合う悲しみ、切なさ、愛情といったものを伝え合う。同時に、それを聞いたときの人々が、「ああ、あの玉手箱を開けなかったら、また元に戻って2人は仲良く幸せに過ごすことができたのに」「開けなかったらよかったのに」「開けてしまったためにこういうふうになったのだなあ」と感じる。

 そのような経験を語ることを通して、時間や寿命というものをどのように経験していくのか、私たちの生存の持つ儚さや悲しさ、そういった現実をよく知って受け入れなさい、といったことを発信していると思うのです。

―― そういう意味では、1つのグリーフケアというか、死を受け入れる準備のようなものにもなるわけですか。

鎌田 「死」と「老い」、それから「現実の喜び」ですね。

 3年も300年も、実はそんなに大きく根本的に変わるものではない、過ぎてしまえば夢幻のようなものだ、と。青春の時代はずっと、このまま生き生きとしたものが続くように思われるけれど、その3年間の幸せな青春時代はあっという間に過ぎ去ってしまい、老いを迎えて、どうしようもない運命の儚さを感じ、その嘆きの中で人間はやがて死んでいく。だから、その中で生きる喜びや悲しみといったものを味わいつつ、この世をあなたの良きように、あなたの望むように、あなたの良き生きる形を作りなさいよ、という諭しにもなると。

 これを聞いた人は考えさせられると思います。ただ「ああ、面白いお話だな」と思うだけか、あるいは自分の行く末のようなものを感じるか。なぜ300年が3年の間なのかということに思いをめぐらせながら...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎
『貞観政要』を読む(1)長期政権を目指す者の必読書
北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
田口佳史
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子