古事記・日本書紀と世界神話の類似
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ホモ・サピエンス「出アフリカ」による神話伝播説の可能性
古事記・日本書紀と世界神話の類似(4)不思議な道具と神話伝播説
哲学と生き方
鎌田東二(京都大学名誉教授)
英雄神話には「不思議な道具」が登場する。それは世界を変容させるきっかけとなるものだが、それも世界の神話における類似点の1つである。さらに、その類似点がなぜ出てくるのかについて、その可能性の1つとして「神話伝播説」を紹介する。(全10話中4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分33秒
収録日:2021年9月29日
追加日:2022年4月10日
≪全文≫

●新しい世界を切り開く「不思議な道具」


鎌田 ペルセウスはそのようにして母親から生まれるのですが、また不思議な預言があります。ペルセウスは怪物を倒して、そのあとアンドロメダという女性と結婚することになります。怪物を退治して美しい姫(女性)を娶る(めとる)といった話が「アンドロメダ神話」だといわれるようになって、英雄神話の中の1つの物語類型になっていきます。

 そのときに「どこでもドア」のような不思議な道具を授かります。このあたりがまた神話の面白いところです。ドラえもんは未来からやってきたロボットですが、神話的な物語の類型を持っているということですね。

―― なるほど。たしかに非常に強力な道具を与えてくれますね。

鎌田 つまり世界を変容させる道具を持っているのです。神話は、人間が変容することによって世界が変容する、世界が変容することによって新しい幕が開く、新しいドラマチックな世界の展開が生み出される、といったことを次々と物語的に繰り出していくわけです。その仕掛けとして、不思議な出来事が起こるための「開けゴマ」のような神宝(宝物)があるのです。

―― 世界を変える力、それを開ける鍵といいましょうか。

鎌田 はい、一種の秘密のパスワードのようなものがあるのです。それに当たるものが、ペルセウス神話では3つあります。ペルセウスが持っている3つの道具は、アテネからもらった青銅の盾、ヘルメスから得た金剛の鎌、それからハーデス(冥府の神)からもらった隠れ兜です。隠れ兜は透明人間になってしまいます。透明人間になれるヘッドセットのようなもので、それをかぶると目に見えなくなります。青銅の盾は、この盾を通してあらゆるものを防ぐことができます。

 そういった不思議な道具を手にすることによって、ゴルゴンという強力で不死身といわれる3姉妹の末のメドゥーサという娘を退治します。メドゥーサはもともと美少女だったのですが、神ヘラの怒り・嫉妬を買って、髪が毒ヘビのようになります。メドゥーサの金色の目を見た者は石になってしまう、そういったイーグルアイ(魔眼)と不思議な恐ろしい髪の毛を持っているのです。だから誰も近付けなくなってしまいます。その末の娘メドゥーサを退治するのです。

 (ということで、)3つの道具を駆使しつつ、そのような強力な怪物を退治することを通して、次の世界を切り開いていく...

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