メソポタミア神話の基本を知る
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ノアの箱舟、ビール…人間の行動の原型とメソポタミア神話
メソポタミア神話の基本を知る(3)大洪水神話のルーツ
鎌田東二(京都大学名誉教授)
世界の神話には大洪水について語られているものが少なくない。現在、もっとも有名なのは『旧約聖書』に出てくる「ノアの箱舟」だろう。だが、世界中の大洪水神話のルーツは、実はメソポタミア神話にあるという。メソポタミア神話が、ユダヤ神話をはじめ世界各地の神話に様々なかたちで伝承され、大きな影響を与えていったのだ。最終話では、ノアの箱舟の物語について解説しながら、神話から見えてくる人間行動の原型に迫る。(全3話中3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分28秒
収録日:2022年4月12日
追加日:2023年6月28日
≪全文≫

●世界の「大洪水神話」のルーツ…「ノアの箱舟」の原型は?


鎌田 それから、もう一つ、これはどうしても語っておかなければいけないのは、大洪水神話です。

 なぜ大洪水神話が重要なのかというと、今、私たちは宇宙に出ていこうという宇宙開発競争の技術開発をしてきたわけです。旧ソ連とアメリカが中心となって、月面着陸なども含めて、1960年代頃から宇宙開発競争がどんどん展開していきました。そして今では、火星移住計画などいうものまで実際にあります。NASAやアメリカなどはそれを強力に推進しています。

 その元をなすのは『旧約聖書』の中にある「ノアの箱舟」の話です。人間が神から離反し、さまざまな悪いことを起こすので、神は人間を懲らしめるために大洪水を起こす。神はそのことをノアに告げます。ノアはそれを皆に話しますが、神を信じない人々は、全く信じません。「ノア、おまえ、頭がおかしくなってしまったのではないか。狂ってしまったのではないか」と。

 誰も信じないので、ノアは、一人で神に指示された通りの箱舟を造り、さまざまな動物の種になるものをそこに運び入れます。

 そうして、みんなから笑いものにされていたノアですが、大雨が降り、大洪水になって、(その箱舟は)40日40夜揺られ続けた後、最後にアララト山に漂着します。そして、新しい世界がノアの子孫で拓かれていく、といった有名な話が『旧約聖書』に出てきます。

 川上さんも読んだことがあると思います。

―― はい、ございます。

鎌田 あの話の元は、実はメソポタミア神話なのです。

―― 同じような筋立てなのですか。

鎌田 「ほとんど同じだ」といっていいと思います。『旧約聖書』を信じる方々には非常に厳しい表現になってしまいますが、ある種、神話も影響されているので、ある種のパクリとかコピペのようなものがあるのですね。そして、その「神話要素」は広く伝承され、伝わっていくのです。

 ですから、メソポタミア神話のあるものは間違いなくユダヤ神話に引き継がれています。ユダヤ神話の中には、エジプトに元々あった一神教的な要素もある。そして、大洪水神話やエデンの園の物語などは、メソポタミア神話の中に原型がある。つまり、メソポタミア神話体系から引き継いでいるのです。

 ウルやウルクといった、(現在のイラクの)バビロ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
『貞観政要』を読む(1)長期政権を目指す者の必読書
北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
田口佳史
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子