人の資本主義~モノ、コトの次は何か?
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法然の考えとは真逆の意味に…「共生」という概念の歴史
人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(4)Human Co-becomingと共生
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
人間を“Human Co-becoming”と捉え、「共生」という概念を他者と共に初めて人間的になっていくという在り方として提案する中島氏。共生という概念の歴史をたどっていくと、法然の唱えた共生を一つの源泉としているのではないかという考え方ができる。しかし、昭和に入ると、この言葉を「ともいき」という読み方にして捉え直した人物がいたり、また軍国主義の中でも用いられたりするなど、ちょっと厄介なことにもなる。そこで今回はそうした点を踏まえ、井筒俊彦氏の議論も交えながら、新しい共生として問い直すことの重要性を解説する。(全6話中第4話)
時間:14分20秒
収録日:2024年4月11日
追加日:2024年8月17日
≪全文≫

●“Human Co-becoming”の提案


 (シリーズ)冒頭にもご紹介しましたが、私は“Human Co-becoming”ということを提案してみてはどうかということを思っています。

 西洋哲学の文脈では、人間は“Human Being”(存在者)というように考えられてきた。なぜ人間を存在者として見るのかというと、当然そこには西洋哲学が持っている存在論があるわけです。「存在」としての神を探求することが第一の哲学である。これはもうギリシア以来、ずっと論じられてきているわけです。でも、本当に私たちは「存在」というヨーロッパ的な概念に拘泥しないといけないのか。これが今、問われているのだろうと思います。

 では、それに対抗する形で、西洋ではなく東洋哲学を研究している人々は“Human Becoming”ということをいったらどうかと。こういうことが言われるようになりました。私は、それを非常にいい提案だと思います。

 私はそこに“co”という言葉を付けて、「共に」といってみました。人間は一人で人間的になるのではなく、他者と共に初めて人間的になっていく。こういう在り方を考えればいいのではないか。そうすると、「存在」に代えて「変容」「生成」「変化」ということを主に置くわけです。これは、人間観の大きな転換になるのではないかと思います。

 このHuman becomingは新しい言葉ではあるのですが、実は古い概念の現代的な翻訳でもあると、私自身は思っています。例えば、古代中国の「仁」という言葉があります。「仁」という概念が当時開こうとしていたものを現代的に読み直すとHuman becomingになるのではないのか。そのように思っているわけです。

 このように、Human Co-becomingということを近年申し上げていましたところ、なぜか海外の先生方が「それは面白い考え方だ」と言ってくださるようになりました。

 ここにあるのは最近出た本ですが、『Gongsheng Across Contexts』というタイトルです。文脈を横断して、“Gongsheng”(中国語で「共生」)する。すなわち文脈を超えて共生する。副題は“A Philosophy of Co-Becoming”で、私が言ったことを採用してくださいました。ともにこうなっていくことを「共生」と捉えたらいいのではないか、と言ってくださったわけで、大変ありがたい試みだと思っています。...

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