人の資本主義~モノ、コトの次は何か?
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封建主義に戻ってはいかない…倫理的資本主義という方向性
人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(6)倫理的資本主義
中島隆博(東京大学東洋文化研究所教授)
倫理的資本主義は、ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルが提唱する新しい資本主義である。その考えの基本は、資本主義初期に渋沢栄一が考えた「道徳経済合一説」とも、アダム・スミスの「道徳経済論」とも共通する。また、人がよりよく花開くためには、資本主義だけでなく民主主義も鍛えなおされなければならない。(全6話中第6話)
時間:11分00秒
収録日:2024年4月11日
追加日:2024年8月31日
≪全文≫

●マルクス・ガブリエルが語る「倫理的資本主義」


 では、ここから倫理的資本主義の話に入りたいと思います。

 私はドイツの哲学者のマルクス・ガブリエル氏とよく一緒に仕事をするようになりました。ガブリエル氏は最近、「倫理的資本主義」ということをよく語るようになってきました。エシカル(倫理的)なものを考慮することによって、資本主義はよりよい方向に行くのではないかということです。

 もちろん、「では、エシカルなものとは何か」ということが、そこでは当然問われるわけです。

 倫理的なものということで私たちがすぐ思いつくのは、「あれをやってはいけない。これをやってはいけない」という規制と考える場合が結構あるかと思います。もちろんそういう面もありますが、ガブリエル氏が出す例は、例えば子どもが溺れかけているとき、自分は冷たいビールを飲んでリラックスして楽しんでいる。どうするか。それはもう、当然助けに行くでしょう、というようなことです。

 道徳的な事実として、子どもが溺れているということはあるのであって、そこに計算をしたりするような忖度というものは働かないというわけです。

 この例は、われわれにとっては実は非常に身近な例で、『孟子』という古代中国の本の中に、「井戸に落ちそうになっている子どもがいれば、すぐにそれを助けに行くでしょう」という例があります。それと同じ例を用いて、ガブリエル氏は道徳的事実ということを強調されている。その上で、倫理と経済というものをもう一度つなげ直そうといっているわけです。


●渋沢の道徳経済合一説、アダム・スミスの道徳感情論


 しかし、よく考えてみると、これは日本の初期の資本主義を支えた渋沢栄一などがいっていたのも同じことです。渋沢栄一は「道徳経済合一説」ということをいわれました。道徳と経済というのは表裏一体だということです。

 考えてみれば、アダム・スミスもそうです。『国富論』や『諸国民の富』という本を出す前に『道徳感情論』で、「感情に道徳を基づかせる」という非常に大胆な主張をしています。この二つの本は別々ではなく、つながっているわけです。経済と道徳の問題というのは決して別物ではないだろう...

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