人の資本主義~モノ、コトの次は何か?
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
封建主義に戻ってはいかない…倫理的資本主義という方向性
人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(6)倫理的資本主義
哲学と生き方
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
倫理的資本主義は、ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルが提唱する新しい資本主義である。その考えの基本は、資本主義初期に渋沢栄一が考えた「道徳経済合一説」とも、アダム・スミスの「道徳経済論」とも共通する。また、人がよりよく花開くためには、資本主義だけでなく民主主義も鍛えなおされなければならない。(全6話中第6話)
時間:11分00秒
収録日:2024年4月11日
追加日:2024年8月31日
≪全文≫

●マルクス・ガブリエルが語る「倫理的資本主義」


 では、ここから倫理的資本主義の話に入りたいと思います。

 私はドイツの哲学者のマルクス・ガブリエル氏とよく一緒に仕事をするようになりました。ガブリエル氏は最近、「倫理的資本主義」ということをよく語るようになってきました。エシカル(倫理的)なものを考慮することによって、資本主義はよりよい方向に行くのではないかということです。

 もちろん、「では、エシカルなものとは何か」ということが、そこでは当然問われるわけです。

 倫理的なものということで私たちがすぐ思いつくのは、「あれをやってはいけない。これをやってはいけない」という規制と考える場合が結構あるかと思います。もちろんそういう面もありますが、ガブリエル氏が出す例は、例えば子どもが溺れかけているとき、自分は冷たいビールを飲んでリラックスして楽しんでいる。どうするか。それはもう、当然助けに行くでしょう、というようなことです。

 道徳的な事実として、子どもが溺れているということはあるのであって、そこに計算をしたりするような忖度というものは働かないというわけです。

 この例は、われわれにとっては実は非常に身近な例で、『孟子』という古代中国の本の中に、「井戸に落ちそうになっている子どもがいれば、すぐにそれを助けに行くでしょう」という例があります。それと同じ例を用いて、ガブリエル氏は道徳的事実ということを強調されている。その上で、倫理と経済というものをもう一度つなげ直そうといっているわけです。


●渋沢の道徳経済合一説、アダム・スミスの道徳感情論


 しかし、よく考えてみると、これは日本の初期の資本主義を支えた渋沢栄一などがいっていたのも同じことです。渋沢栄一は「道徳経済合一説」ということをいわれました。道徳と経済というのは表裏一体だということです。

 考えてみれば、アダム・スミスもそうです。『国富論』や『諸国民の富』という本を出す前に『道徳感情論』で、「感情に道徳を基づかせる」という非常に大胆な主張をしています。この二つの本は別々ではなく、つながっているわけです。経済と道徳の問題というのは決して別物ではないだろう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
法華経はSFだ!…心を元気にしてくれる法華経入門
鎌田東二
イスラム教におけるシーア派とスンニ派の違い
イスラム教スンニ派とシーア派の違いとは?
山内昌之
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一

人気の講義ランキングTOP10
未来を知るための宇宙開発の歴史(14)宇宙開発は未来をどう変えるか
『2001年宇宙の旅』が現実になる!?カギは宇宙医学
川口淳一郎
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(3)テクノロジーの進化とエンタメのいま
VR、ゲーム実況、ブロックチェーン…一方でリアルライブも
水野道訓
【入門】日本仏教の名僧・名著~総論(1)名僧の原著に触れる意味
「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる
賴住光子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子