人の資本主義~モノ、コトの次は何か?
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
人間中心主義はやめたほうがいい…資本主義の残酷な前提
人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(3)資本主義に賢くなってもらうために
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
資本主義に賢くなってもらうためには、「欲望」「利己心」「資本」「時間」「差異」など近代的諸概念をアップデートしていくと同時に、「共生」「定常経済」「脱成長」など新しい概念や新しい言葉を生み出していく必要があるという中島氏。そこで人の資本主義を考える上で、人間中心主義をやめたほうがいいと提案する。どういうことなのか。シカゴ大学教授の話を交えながら、これからの資本主義のあり方について語る。(全6話中第3話)
時間:7分05秒
収録日:2024年4月11日
追加日:2024年8月10日
≪全文≫

●今日の資本主義には古い概念のアップデートと新しい概念の創造が必要


 では、資本主義にはどのようにして賢くなってもらえばいいのでしょうか。

 資本主義を語るときには、さまざまな概念が用いられます、いくつか挙げると、「欲望」「利己心」「資本」「時間」「貨幣」「利潤」「利子」「価値」、そして「差異」という言葉もよく使われます。

 このように非常に重要な(さまざまの)概念があるわけですが、そうした概念は、本当に十分アップデートされているのでしょうか。ひょっとすると、今日の資本主義を理解するためには役立っていない可能性すらあると思います。

 私は、資本主義により賢くなってもらうためには、今申し上げた近代的な諸概念をアップデートしなければならないと同時に、新しい概念や新しい言葉を生み出していく必要があるのではないかと思います。

 『人の資本主義』という本の中で、多くの論者の先生方に新しい概念のご提案をいただきました。例えば「共生」、これは後でまた申し上げたいと思います。あるいは「定常経済」「脱成長」「手入れ」などといった言葉があるわけです。私は、こういった概念が今の資本主義を理解するために、やはり必要なものではないかと思っています。

 面白いと思うのは、私たちの生(ライフ)というものが非常に複雑な複雑系を成している中では、どのような概念でその複雑系を理解するかということ、それ自体が複雑系に影響を与える、つまり私たちのライフに影響を与えるということです。

 言い換えれば、概念をアップデートする、概念を新しく生み出すというのは、単に複雑系を記述しているのではないわけです。それ自体が生(ライフ)というものに関与する、非常にダイナミックな試みだということだろうと思います。

 考えてみると、資本主義というものは多分もはや単なるシステムではなくて、すでに私たちがそれを生きてしまっているものですから、これも人間にとっては複雑系の一部を成しているものだと思います。

 (資本主義を)「システムとして外部にある」というように見ることはちょっとやめておいたほうがいいのではないか。そうではなくて、私たちのライフ(生)がすでに組み込まれてしまっているものではないのか。

 ですから、概念を鍛え、概念を発明することによって、資本...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(5)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈下〉
『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治