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人間中心主義はやめたほうがいい…資本主義の残酷な前提

人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(3)資本主義に賢くなってもらうために

中島隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授
概要・テキスト
『人の資本主義』(中島隆博編集、東京大学出版会)
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資本主義に賢くなってもらうためには、「欲望」「利己心」「資本」「時間」「差異」など近代的諸概念をアップデートしていくと同時に、「共生」「定常経済」「脱成長」など新しい概念や新しい言葉を生み出していく必要があるという中島氏。そこで人の資本主義を考える上で、人間中心主義をやめたほうがいいと提案する。どういうことなのか。シカゴ大学教授の話を交えながら、これからの資本主義のあり方について語る。(全6話中第3話)
時間:07:05
収録日:2024/04/11
追加日:2024/08/10
≪全文≫

●今日の資本主義には古い概念のアップデートと新しい概念の創造が必要


 では、資本主義にはどのようにして賢くなってもらえばいいのでしょうか。

 資本主義を語るときには、さまざまな概念が用いられます、いくつか挙げると、「欲望」「利己心」「資本」「時間」「貨幣」「利潤」「利子」「価値」、そして「差異」という言葉もよく使われます。

 このように非常に重要な(さまざまの)概念があるわけですが、そうした概念は、本当に十分アップデートされているのでしょうか。ひょっとすると、今日の資本主義を理解するためには役立っていない可能性すらあると思います。

 私は、資本主義により賢くなってもらうためには、今申し上げた近代的な諸概念をアップデートしなければならないと同時に、新しい概念や新しい言葉を生み出していく必要があるのではないかと思います。

 『人の資本主義』という本の中で、多くの論者の先生方に新しい概念のご提案をいただきました。例えば「共生」、これは後でまた申し上げたいと思います。あるいは「定常経済」「脱成長」「手入れ」などといった言葉があるわけです。私は、こういった概念が今の資本主義を理解するために、やはり必要なものではないかと思っています。

 面白いと思うのは、私たちの生(ライフ)というものが非常に複雑な複雑系を成している中では、どのような概念でその複雑系を理解するかということ、それ自体が複雑系に影響を与える、つまり私たちのライフに影響を与えるということです。

 言い換えれば、概念をアップデートする、概念を新しく生み出すというのは、単に複雑系を記述しているのではないわけです。それ自体が生(ライフ)というものに関与する、非常にダイナミックな試みだということだろうと思います。

 考えてみると、資本主義というものは多分もはや単なるシステムではなくて、すでに私たちがそれを生きてしまっているものですから、これも人間にとっては複雑系の一部を成しているものだと思います。

 (資本主義を)「システムとして外部にある」というように見ることはちょっとやめておいたほうがいいのではないか。そうではなくて、私たちのライフ(生)がすでに組み込まれてしまっているものではないのか。

 ですから、概念を鍛え、概念を発明することによって、資本...
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