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私たちはどんな社会を望むのか?鍵は「希望のレッスン」

人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(2)社会システムの洗練と希望のレッスン

中島隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授
概要・テキスト
『人の資本主義』(中島隆博編集、東京大学出版会)
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生成AIなど情報技術が著しく発達した現在、資本主義にはより賢くなってもらう必要がある。同時に、私たちの社会が真に豊かになるためには、社会システムを洗練することがどうしても必要であるという中島氏。そのためにも、私たち自身が「いかなる社会を望むのか」という問いを問うことによって社会的想像力を鍛えることが大事で、そこで提唱しているのは「希望のレッスン」である。どういうことなのか。今回は、村上龍氏の著書『希望の国のエクソダス』なども取り上げながら解説する。(全6話中第2話)
時間:09:40
収録日:2024/04/11
追加日:2024/08/03
キーワード:
≪全文≫

●資本主義にはより賢くなってもらう必要がある


 (前回お話ししたように)「人の資本主義」を考える以上は、人間を枯らさないような、花が開いていくような方向に持っていく。このことが肝要なわけですから、資本主義にはより賢くなってもらう必要があるのだろうと思います。

 つまり、適切な時期に適切に支えるような仕組みを、資本主義の中にちゃんと埋め込んでいくことが必要だということです。

 現在、生成AIなどもそうですが、テクノロジー、とりわけ情報技術というのは進んでいるわけです。ただ、そこにはやはり光と影の両方があるのだろうと思います。悪くすると人間を変な仕方で支配する方向に行きかねないわけで、そこには警戒を怠ってはいけないと思います。

 AIもそうですが、人工知能といわれているものはある種の計算をする能力です。私たちの世界を計算し尽くそうという欲望が深くあるわけですが、私たち人間が生きる中には、計算を外れるもの、つまり到来してくるものや偶然的なものなどが非常に大事なわけです。

 ところが放っておくと、計算し尽くそうという欲望が、到来するものや偶然的なものをあらかじめ排除してしまうようなことにもなりかねないわけです。

 しかし、それこそが、私たちの知恵の見せどころが来ていることを告げているのではないかと思います。

 私は(人工知能が)人間を支配したり、未来を支配したりすることは、原理的にできないのではないのかと思っています。なぜかというと、人間というものは到来するものや偶然的なものに開かれている。他者とともにある。そういうかたちで変容するものなのです。それを何らかの手段で支配し尽くすというのは、非常に難しいと思います。

 未来も同様です。未来というのは現在の延長線上にはないある種の新しさです。それを支配し尽くすということは、やはり無理だろうと思います。それでも今のアルゴリズムを構築するテクノロジーには、その方向に向かいたいというところがどうしてもあるわけです。

 ですから私は、アルゴリズム構築の中に、それが肥大化しない穴のような仕掛けを組み込むことが重要なのではないのかと思っています。つまり、人間が本当に自由になるために情報技術が使われるべきだ。そのことを徹底していったらどうかと思っているのです。

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