進化的人間考~ヒトの性質と異様な現代社会
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
心の共有、共感、推論、言語…ヒトの脳が大型化した理由
進化的人間考~ヒトの性質と異様な現代社会(2)ヒトの脳の大型化と大規模社会の形成
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
ヒトと他の動物の違いに、食料の獲得方法と調理の多様さがある。食料を得る生計活動があまりに大変なため、ヒトは共同体をつくり、次世代にさまざまな方法を継承して、より良く改良を重ねてきた。それは進化ではなく、生活自体がもたらした変化である。その中で脳は大型化し、それがやがて都市文明と大規模社会の形成につながっていく。(全3話中第2話)
時間:13分17秒
収録日:2024年6月12日
追加日:2025年1月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●「食べる」ために使われ、発展した脳


 ヒトが普通の動物と比べてどれだけ食べ物をとるのが大変なのか、このチンパンジーとの比較(表をご覧ください)。

 チンパンジーは、採って食べればいいという採集(生活)です。手で取って、もぎ取って食べればいいというもので、ほぼ全ての食料が手に入ります。ですから、赤ちゃんが離乳したら、すぐにもいで食べるということで、自分で生きていけます。

 ところが、(表の)左側にあるヒトは、採集のみの、もぎ取って食べればいいものはせいぜい多くて20パーセントしかありません。他のものは何らかの形で苦労して取ったものを、さらに何らかの形で抽出したり、つぶしたり、調理したり、火で炊いたりしないといけない。これはなかなか一人ではできないことで、大人でも一人ではできないし、子どもが離乳したからといって、すぐにこのように食べるわけにはいかない。

 そもそも大人の生計活動、食料を得る活動自体がとても大変なことで、子どもも大人もみんなが協力して、共同でやらないとできない。そして、子どもはたくさん習わないといけない。そういう脳みそなので、進化の過程でいろいろな学習をし、教えることやみんなで発見したことをシェアすることなどは上手です。そこで、どんどんいろいろなことを改良していく。そういう卓越した社会をつくってしまったわけです。

 基本的に狩猟採集生活からわれわれのからだや脳が発展したというのは、発展かもしれないけれど、遺伝的に進化が起こってのことではない。大昔からそういう生活をしてきたので、形は変わってきたけれど、もともとのものは同じだということを言いたいのです。


●狩猟採集社会と現代社会の「分業」の違い


 そのように、ヒトの基本である「共同作業によって食料を得る」ということがたいへん困難だったため、(狩猟採集生活では)分業と協力が非常に大事になります。基本的に、個人は何でもできます。火を焚く、果物を採る、狩猟するなどの技を、個人は基本的に全てできる、つまりマルチタイプです。しかし、一人でそれをやり続けることはできず、みんなで協働する。ここが大きく違うところです。

 今のわれわれは分業していますが、「私はこれしかできません」「これしかできなくて、他のことは知らない」「...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
現在の宇宙の姿(1)星はなぜ自ら輝くのか
星はなぜ自ら輝くのか…宇宙と銀河の「現在の姿」を概観する
岡村定矩
科学的思考はなぜ大切か(1)「状態図」という概念
科学的思考とは「なぜ?」を追究していくこと
岡部徹
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
心と感情の進化(1)そもそも「心と感情」とは何なのか
「心と感情」とは何か、行動生態学から考える大事な問題
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
クラシック音楽の歴史をピアノ演奏で辿る~ヴィヴァルディ四季
野本由紀夫
「満洲」から考える日本とアジア(4)蒙古襲来と清朝建国
実は元寇はモンゴル人ではなかった?満洲をめぐる民族興亡史と「漢族」との関係…蒙古襲来から清朝建国まで
宮脇淳子
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
クラシック音楽で世界史がわかる…宗教音楽からクラシックへ
片山杜秀
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
音楽の父バッハ…なぜ「音楽」が西洋でリベラルアーツなのか?
樋口隆一
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
テロメアから考える「アンチエイジング」(1)老化とテロメアの関係
テロメアの長さが「がんリスク」と「老化」のカギを握る
堀江重郎
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
Microsoft Copilot~AIで仕事はどう変わるか(7)AI活用の落とし穴
AIへの不安と懸念…だからこそ「教養」が必要になる
渡辺宣彦
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(7)英雄と武器と喪失と家族
英雄たちの「特別な武器」と「喪失」…悲劇かハッピーエンドか、そのメッセージの秘密
松村一男
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎