進化的人間考~ヒトの性質と異様な現代社会
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心の共有、共感、推論、言語…ヒトの脳が大型化した理由
進化的人間考~ヒトの性質と異様な現代社会(2)ヒトの脳の大型化と大規模社会の形成
科学と技術
長谷川眞理子(日本芸術文化振興会理事長/元総合研究大学院大学長)
ヒトと他の動物の違いに、食料の獲得方法と調理の多様さがある。食料を得る生計活動があまりに大変なため、ヒトは共同体をつくり、次世代にさまざまな方法を継承して、より良く改良を重ねてきた。それは進化ではなく、生活自体がもたらした変化である。その中で脳は大型化し、それがやがて都市文明と大規模社会の形成につながっていく。(全3話中第2話)
時間:13分17秒
収録日:2024年6月12日
追加日:2025年1月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●「食べる」ために使われ、発展した脳


 ヒトが普通の動物と比べてどれだけ食べ物をとるのが大変なのか、このチンパンジーとの比較(表をご覧ください)。

 チンパンジーは、採って食べればいいという採集(生活)です。手で取って、もぎ取って食べればいいというもので、ほぼ全ての食料が手に入ります。ですから、赤ちゃんが離乳したら、すぐにもいで食べるということで、自分で生きていけます。

 ところが、(表の)左側にあるヒトは、採集のみの、もぎ取って食べればいいものはせいぜい多くて20パーセントしかありません。他のものは何らかの形で苦労して取ったものを、さらに何らかの形で抽出したり、つぶしたり、調理したり、火で炊いたりしないといけない。これはなかなか一人ではできないことで、大人でも一人ではできないし、子どもが離乳したからといって、すぐにこのように食べるわけにはいかない。

 そもそも大人の生計活動、食料を得る活動自体がとても大変なことで、子どもも大人もみんなが協力して、共同でやらないとできない。そして、子どもはたくさん習わないといけない。そういう脳みそなので、進化の過程でいろいろな学習をし、教えることやみんなで発見したことをシェアすることなどは上手です。そこで、どんどんいろいろなことを改良していく。そういう卓越した社会をつくってしまったわけです。

 基本的に狩猟採集生活からわれわれのからだや脳が発展したというのは、発展かもしれないけれど、遺伝的に進化が起こってのことではない。大昔からそういう生活をしてきたので、形は変わってきたけれど、もともとのものは同じだということを言いたいのです。


●狩猟採集社会と現代社会の「分業」の違い


 そのように、ヒトの基本である「共同作業によって食料を得る」ということがたいへん困難だったため、(狩猟採集生活では)分業と協力が非常に大事になります。基本的に、個人は何でもできます。火を焚く、果物を採る、狩猟するなどの技を、個人は基本的に全てできる、つまりマルチタイプです。しかし、一人でそれをやり続けることはできず、みんなで協働する。ここが大きく違うところです。

 今のわれわれは分業していますが、「私はこれしかできません」「これしかできなくて、他のことは知らない」「...

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