ヒトの性差とジェンダー論
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ生物は「生きているだけ」で素晴らしいか…変異の大切さ
ヒトの性差とジェンダー論(8)変異こそ生物として大変重要な特徴
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
「子どもがゲイの場合、母親の育て方が間違っていたのか」「多様性は生き残りのためということを踏まえて、今を生きる世代が考えなければいけないことは何か」など、本講座終了後、さまざまな質問が会場から寄せられた。長谷川眞理子先生は、「生物学で重要なのは『生きていること』」「『変異』こそ生物として大変重要な特徴」だと喝破するが、その心とは。最終話ではそのような質疑応答を4つ取り上げて紹介する。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第8話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分33秒
収録日:2024年5月18日
追加日:2024年10月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●生物は全てバリエーション――生物学で重要なのは「生きていること」


―― 質問1:子どもがゲイの場合、よく母親は「私の育て方が間違っていたのか」と嘆くことがあります。講義では「育て方よりも妊娠中に脳が男性化することによる」とお聞きしましたが、その理解でいいでしょうか。

長谷川 そうです。それに似ているのが自閉症の場合です。1960年代ぐらいには、「自閉症になるのは、母親が冷蔵庫のように冷たい人だったから、そうなったのだ」といわれていました。しかし、ASD(自閉症スペクトラム症)はそうではありません。発達の過程での脳の配線の問題で、一つのこともこだわって他のことが見えないというのは(脳の)配線のあり方の一つのバリエーションだと分かってきて、冷蔵庫母親仮説は否定されました。それと同じようなことをいわれているのではないかという気がします。

 脳の働きは非常に複雑で、胎児期の10カ月から育っていく過程まで、とても多様で複雑なインプットがあって起こることなのに、母親の育て方が一個の原因というのは、あり得ないのです。

―― 質問2:例えばゲイの友人がそのことで苦しんでいる状況を見ると、生物学的にいうと男性化が完成しなかったという、まるで製品として不良品のようだという考え方もあるかもしれません。このあたり、どう捉えるのがよろしいでしょうか。

長谷川 私は、バリエーションだと思うのです。バリエーションというのは、いろいろな範囲で、とにかく「生きている」わけですから。生物学で一番重要なのは、まず「生きていること」。そして次に、「子どもがどう残るか」ということなのです。

 生きているというのは、いろいろな障害を体に持つ人であっても、生まれて生きている人は、みんなすごいのです。それより前の受精卵のときに死んでしまったり、胎児で死んでしまったりするようなバリエーションもいっぱいあるのに、「生まれてきた」ということ自体、あるクリティカルなところを越えてできているので、これはすごいことなのです。

 男性に起こる男性化(MasculinizationとDefeminization)も、女性のMasculinizationも、いろいろな範囲のなかであり得ることなので、「製品」としてどうこうという、何か「完成品」という一つの基準があると思っていること自体が、工場のようなことを生物に当てはめているのだと思います。

 生物は全てバリエーシ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏